廻る、廻る、空が地面が、体が、オレが。
目が覚めたら見慣れた、清潔感のある天井に白いカーテンで仕切られた空間。
ツーンとした消毒液の匂いはいつまでたっても慣れない。
――…いや、慣れるものでもないか
動かない体を無理に動かそうとしたら、ギシリと、あまり良くない音がしてベッドに逆戻り。
はぁ、と一息ついたとき、カーテンが開かれて一人の看護師が視界の端に写った。
――…あー、あの豪快な年配看護師じゃないといいな
「はたけさーん、お体の方はどうですか?」
無理に出した猫なで声でも、年配のあの看護師でもない、初めて聞く声に、辛うじて動く首を動かして、声の主を捉えれば、まさに、白衣の、天使がいた。
「あー…、体動きません」
ハハハ、と乾いた笑い声と共に絞り出した声は情けないぐらい掠れて、なんだか恥ずかしくなった。
「そうですか、…痛いところとかは無いですか?」
その後も続く、彼女の質問に答えながら胸元にかかるネームプレートを見れば「苗字名前」の文字。
――…名前ちゃんか、退院したら、ご飯でも誘おうかな。
あわよくば…、なんて、これって怪我の功名じゃない?
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怪我の…功名、なのか?
111213
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