私には、嫌いな女がいる。
特に喧嘩した、とか幸せそうだから爆発しろ!とかじゃなく、…うん。一言で言えば馬が合わないってやつ。
「わが君、例のマグルは…―」
この屋敷にいると息が詰まる。少し遠くの方で断末魔の叫び声や命乞いをする声を聞きながら、ため息をつけばナギニが慰めるかのように足に絡まりながら昇ってくる。
「お前の主人は嫌な奴ね、」
ポツリとそう溢せば反応したのは私の嫌いなあのオンナ、
「あんた今何て言った!!」
――…ああ、うるさいわね。なんて地獄耳なのかしら、
ぼうっと声を聞いていたからか、あのオンナは如何にも怒っています、と言うように詰め寄ってくるのがわかったけれど、…どうでもいいのよね
「聞いてんのか!!」
「そんなに大きな声出さなくても聞こえてるわよ」
「さっき何て言ったか聞いてるんだよ!」
「私はナギニに話してたのよ?」
「わが君の事をバカにした!」
なんて面倒くさいんだろう。ナギニは怒らずスルスル巻きついて私に触れと催促してくるだけなのに。ああ、ナギニ可愛い。
「ナギニ、お前の主人は本当によくわからないわ。」
なんでこんなに煩いオンナを部下に持ってるのか、なんで罪のない人間を殺すのか、……なんで私を傍に置くのか、わからない。
ため息をつけば、癪に障ったのか杖を構え厭らしく笑う彼女が視界に映ってまた私をイラつかせた。
「クルーシオ!!」
叫んだ呪文は私が座っていた椅子に直撃して無惨な姿へ変わってしまった。
私を探す彼女の頭を固定して背後から首筋に杖を突きつければ、ひゅっと息をのむ音が聞こえて少し笑えた。周りの死喰い人も私たちの行動に固唾をのんで見守っているのにも、また笑えた。
「ナギニに当たったらどうするつもり?」
「…っ、」
「ナギニに何かあったら、例えかすり傷でも、…殺すわよ?」
グッと力を入れれば痛みに顔を歪めた彼女を解放してあげる、でも今度は悔しそうに顔を歪めていた。短気は損気って言うのに
バチ、と部屋に音がしてまた私の苦手な奴がきた。
「あまり俺様の部下を虐めるな」
「私が虐められてるのよ」
「そうは、見えないがな」
ククク、とやらしく笑う彼もまた、私をイラつかせる。やっとスッキリしたばっかりだと言うのに…
「ナギニ、いきましょう?美味しいご飯にしましょう」
「待て、俺様も行く」
「嫌よ、来ないで」
「それならナギニは連れて行くな」
「ホント、嫌な奴ね。」
そう一言だけ吐き捨てれば、愉しそうに笑う彼と複雑そうに顔を歪める彼女、そして身体を震わす彼の部下達。…くだらない
ナギニを連れて部屋を出れば、幾分か息がしやすくなった気がして深く深呼吸をすると、食事を待ちきれなくなったのかナギニが体を震わせた。
「ねえ、ナギニが好きな食べ物ってなに?」
「何故お前はナギニ以外の名前を呼ばない。」
「今は私が、ナギニの好物を聞いてるの」
「…俺様の名を呼べ」
「私の話聞いてないし」
「呼べ」
「…リドル。」
そう返せば、嫌そうに眉間にシワを寄せる彼にほくそ笑む。ここにいる人たちは本当に面倒な人ばかり。
「その名は捨てた。俺様名を、呼ぶんだ!」
「ヴォルデモート、これで満足?」
「…もう一度だ、」
「はあ、もう勘弁してよ」
ナギニ行こう、と彼に背を向けて歩き出せば彼は寂しそうに私の名前を呼んだ。思わず足を止めてしまった自分に腹が立つ。
「……ヴォル、行くわよ」
「ああ、」
彼の行動も気持ちも、あのオンナも全部わからない。でも、あなたに名前を呼ばれると、胸がきゅうっと締め付けられるこの感覚が、1番、わからない。
***
彼女(あのオンナ)=ベラトリックスです。でも、ベラ姐好きですよ!ディスっちゃってごめんなさい!ファンの方すみません!ヴォルはツンデレ…なのか?
111010
[*prev] [next#]