私はこの世に生を受けた瞬間から重罪人だったのだ。…だった、と言うのはそれをつい最近になって知ったからなのだけど。
私がこの世に誕生するのと引き換えに母親の命を奪ってしまったのが始まりで、私が言葉を覚えるのと引き換えに父親の精神を壊してしまったのだ。
どうしてか、私の近くにいる人はいつも不幸が訪れた。
初めはみんな、「名前に何もなくてよかったわ。」なんてことも言ってくれたのだけど、暫くすれば私は"呪われた子"なんていう異名がついていた。
私自身、自分を気味が悪いとも思ったし私のせいで不幸が起きた人を気の毒にも思った。
――でも、確信もなく私は蔑まれたままでよいのだろうか。と思ったら、心の奥に秘めた醜い感情がふつふつと込み上げ、ついには溢れでた。
そして溢れた結果、私はいくつもの命の灯を消したのだ。
「…神様、彼にどうか御加護を」
恐怖にのまれた人の顔は本当に素直で儚い。――それに魅了された私は悪魔に好かれた憐れな女。
「…罪人が神頼みだなんて、おかしな話。」
バカみたいに、一途に愛を信じるバカな彼にいつしか惹かれたの。私には無い純粋さに、強さに。
腹部が抉れて息も絶え絶えに目の前の彼は、苦しそうに、それでも何処か嬉しそうに呟いた。
「リ、リー…」
彼の最期の言葉を聞き取って私は家に帰って誰にも知られず、静かに涙を流した。
「ただ、愛されたかった故に、私は間違えてしまった…」
闇の帝王の終末も、選ばれし子の終末も、興味はない。
自分に杖を向けてただ、唱えるだけ。
「――アバダ・ケダブラ」
生まれ変わったら、誰かが愛してくれることを切に願って。
染まる、染まる、真っ黒に
111221
[*prev] [next#]