▼ 07
ついにあたしもアカデミーへ入学する歳になった。数ヶ月前に漸く納得のいく豪火球を出せるようになって、嬉々として父に見せれば父はあたしが密かに修行をしていたことなんて知らなかったようで酷く驚いた半面嬉しそうに「一人前だ」と認めてくれだのだ。
その時の嬉しさといったらもう、言葉に表わせないくらいのものだった。その日一日は些細な事でも愉しく感じてイタチ兄に笑われてしまったのだけれど。
「これから君たちは立派な忍びとして…――」
在り来たりの台詞にこっそりと溜息を吐く。両親が居る手前あからさまにつまらない、という態度をとるわけにいかない上イタチ兄の妹というレッテルからか、それともうちはの名がそうするのか好奇と畏怖の目があたしを容赦なくつき射していく。
「それじゃ、今から順に自己紹介をしてもらう。名前と夢、あとは好きなものと最後に一言を言ってもらおうか」
担任がそう発言すれば、少しばかり生徒たちが緊張したように思えた。あたしの隣に座っている子も顔ばかりか体すらも強張らせて小さな声で何を話そうかと呟いている。
「では、次」
気が付けばいつのまにかあたしの順が目の前にきていて何を話そうかと少し考えたけれど、夢にしろ、好きなものにしろ考えるまでもなかった。
あたしの前の子が終わって小さな拍手と共に周りの視線があたしに集まるのをひしひしと感じて少し居心地が悪い。イタチ兄もこんな風に過ごしてきたのかと思うと少し同情めいた感情が湧き起こる。
「うちは名前です。夢は一流の忍になることで、好きなものは木の葉の里と家族。よろしくお願いします。」
多少の嘘も交えて模範になるべく近づけた答えを言えば感嘆の声があがる。単純な人たちだなと内心嘲笑に近いものがわき上がるのを堪えて人受けのよい笑みを浮かべて一礼して席に着く。
最後の一人が自己紹介を終えれば、今日は解散という声に生徒たちは一斉に保護者の元へと向かって行った。その姿を見て素直に甘えられる子達が少しだけ、羨ましくも感じた。
「名前帰るぞ」
「うん‥」
最近、父はイタチ兄ばっかりです。
120602
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