処刑台の主役 | ナノ


▼ 67

マダラさんに抱かれ、あの場所を去るとき。彼らは複雑な表情をしてあたしに手を伸ばしてくれた。あれだけあたしを憎んでいたサスケですら悲痛な面持ちで消える最後まで見ていた。――なんて、嗚呼、なんて幸せだろう


「名前」

「…ゼツから聞いているでしょう」

「お前も俺を裏切るか」


マダラさんの声は、沈みも浮きもしてなかったけど。思わず見上げた彼の目は酷く不安に揺れていた。そんなマダラさんは初めてでいつも掴みどころの無い人だとは思っていたけれどいったい何が彼をそんなにも衝撃を与えているのか、あたしには分からなくて何を言っていいかも分からなかった。

――だって、あたしはもうマダラさんを裏切る事も出来ないのだから


「マダラさんの言う世界の先には何があるの?」

「…名前、お前は何があると思う」

「なんでもいいよ、…だってその先にあたしの求めたものは無いから」


兄さん。もうやめよう、

「どうして、人はみんな誰かを憎むことで自分を保ってしまうんだろうね。サスケとあたし。あたしと木の葉。マダラさんも暁のメンバーたちも、みんな、みんな…。そうして誰かを愛す事で自分を生かしていくんだ。誰も憎まずに生きる事はできなくて、誰も愛さず自分を保つこともできなくて、…人って難儀だよ」


見据える先には賑わう里。それから暫くマダラさんとは無言が続いていたけれど、息を吸う気配に少しだけ視線をずらす。


「名前、先ほど死ぬ気だったな」


そうか。
マダラさんを動揺させていたのは他でもないあたしだったのか。死ぬつもりは無かったけれど、そう見えたのならそうなのかもしれない。どうせ死なない体だからと意識していなかった。


「そんなつもりはなかったよ」

「だったら何故、…お前はオレのものだろう?あの日お前は、名前はこのオレのものになった、だがなぜ引こうとしなかった!!俺があの場から連れ出さなければどうする気だったんだ!?鬼鮫に伝えたアレはなんだ…ッ!!答えろ名前!!」


痛いぐらいに肩を掴み、怒鳴るマダラさんに対してあたしは妙に冷めていた。いや、冷静じゃないのかもしれない、彼ら――イタチ兄さんとサスケ――と戦った余韻が残っているのかもしれない
現にマダラさんは、あたしの顔を見てイラついたような表情を隠しもしない。ああまた怒鳴られるかもしれない、そう思うぐらいには冷静になっていたけど夢心地がどうしても抜けない


「じゃあマダラさん。あたしの片目‥あげようか」


突拍子もなくそう言ったら今度は酷く傷ついた顔になって、今日のマダラさんは情緒が不安定なのかな、なんてちょっぴり優越に浸ったのは内緒のはなし。


150104

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