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ああ、やはりオレはいつだって遅いのだ。
「…すまない、すまなかった…お前に、その荷を背負わせる気なんてなかったのにすまない、名前‥っ、すまない…!!」
情けない、何が兄だ…っ、何が秀才だ…!里のため一族のため、家族の為と力をつけたはずなのに結果はどうだ?妹に、名前に重荷を背負わせ里は褒め称えるべき名前を抜け忍とし罪人と称し命を狙う。サスケこそはと誓ったというのに名前と同じ道へと進ませてオレは里に縛られ監視され行動を制限されている。……―――オレは一体何をしていたんだ?何をしたかったんだ?
「…お兄ちゃんのせいじゃないよ」
「!」
…――あたしを恨んで生きてください。どうか命尽きるその瞬間まで、あたしを憎んで生きてください。殺したいと、あたしのこの命を己の手で消したいとそう強く強く願って生きてください。"――暗闇であの子はオレに助けてと泣いていた――殺したくなんて無いんだよ、助けてお兄ちゃん、怖い…こわいよ――ドウシテ助けてくれないの…――
"全部オマエのセイだ"
「本当に、お兄ちゃんのせいじゃないの。…だからもう忘れていいよ、全部今までのこと全部」
「‥名前」
「‥っふざけるな!!忘れろだと?そんな簡単に…っ!!」
「ずっと、…ずっと皆の記憶に永遠とあたしの存在がいればいいと思ってた。憎しみでいいからあたしの事を想ってくれればいいと思ってた。そうすることであたしの存在を認めて貰いたくて、最後にイタチお兄ちゃんとサスケの手で死ねたら、って‥そう思ってた」
――ごめんね。
考えるよりも先に、体が動いていた。
震える体を抱きしめて、少しの隙間も無いように何者も入れないように力強く抱きしめて、オレと同じ様に名前を包み込むサスケも。きっと同じ気持ちで同じように後悔と、泣きたくなるほどの想いをこの子にぶつけているんだろう。
俺たちは、ずっと一緒だった。産まれてから色々なしがらみに囲まれながらも互いに手を取り過ごしてきた。この、縁側で三人並んで話をし喧嘩をして泣き、笑い。戦争を知るオレにとっては兄弟で過ごすこの時間が何よりも大切で掛け替えの無い一時だった。
きっと、名前も同じだったんだろう。九尾が里を襲ったあの日あの子は酷く冷静で居た、あの時は混乱をしていて状況を把握していないからだと思っていたけれど、違ったんだ。全て認め消化し、オレ達の里を逸早く考えていたんだろう――なんて、事だろうか。
「ああぁあ"…ッ!!姉‥さっ…!名前姉さん…っ!!」
「ごめんね、」
今度こそ、オレは2人の兄として己の誓いを叶えるよ。
イタチお兄ちゃんを悲しませるものは全部あたしが消してあげるからね
――…最後だと涙を流したあの時の妹は、こんな気持ちだったんだろうとやっと共感することが出来た。
141018
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