処刑台の主役 | ナノ


▼ 63


「――懐かしいなぁ。覚えてる?この縁側で3人並んで話して笑ってた時のこと。」

「…ああ、覚えてるさ名前。」
「兄さん!今はそんな事より…っ」

「相変わらずせっかちだなぁ、サスケは」


あたし達が育った家、誰の気配も無いこの世界で望みを託そう。ふたりなら――あたしの兄弟なら大丈夫。だってあたしの自慢の兄弟なんだもん


「2人はさ、前世だとか転生って出来ると思う?」

「フン、気でも狂ったか?」

「サスケ、」

「チッ…分かったよ、兄さん」


――あたしも、そう思ってた。まるで絵物語のようでついに気が触れたのかとそう思った。
ただ…酷く安心したの。これが現実でよかったって、彼女の元から逃げだせたんだって、


「やっと、死ぬことが出来たんだ、って」


――あの頃はただ毎日何もすることもできず、彼女から与えられる痛みを感じることで生を実感して生きていた。そして彼女もまた、あたしに痛みを与えることで生きる事を保っていた。あの頃のあたしたちはそうすることでしか生きる事が出来なくて、痛みが何より生きている証拠だった。


「名前、一体何が…いや、彼女とは一体誰だ?」

「あの頃のあたしを産んだ人」


静寂を保つ中で不釣り合いなほどに感じる動揺。お兄ちゃんは、サスケは、優しい。未だあたしを妹と、姉と思ってくれている


――そんな生活をしらばく続けていたけれど、ある日唐突にそれは終わりを告げた。あの時のあたしが最期に見たのは母だった女の血走った目だけ。


「そして次に意識が戻った時はもう、温かい母上の腕の中」

「…っ、だから何だ!そんな話で同情でも引こうってか?」

「サスケ!」

「そうかもね…、でもね重要なのはここからなのよ」


――転生後あたしはうちは一族の末路を知っていたの。理由を話すと長くなるから割愛するけれど、そうね…ごく一部の先読みが出来たと思ってくれればいいよ。
…あたしはうちは一族を、そして何より母上と父上…そしてイタチお兄ちゃんにサスケ。あなた達を愛していた。一族で生きる事が何よりも幸せだった。


「だったら何故自ら殺した!!」

「それが最善だったからよ」


――お兄ちゃんはもちろん知っていると思うけれど、…ある日うちは一族がクーデターを目論んでいる事を偶然聞いてしまった。あの時の絶望って言ったら…、そう、もしもクーデターを起こしてしまったら一族だけの話じゃない、木の葉隠れの里どころか火の国全体が大きく揺らぐはず、――それを他国が見逃すはずない。これを機に戦争の引き金になる可能性だってあった…っ!


「――そうして考えたのよ。」



"この幸せを絶対に手放したりはしない。この幸せを奪おうとする者が現れるならば、あたしはきっと容赦しない。"

でも、あの頃のあたしはどうしても幼すぎた、考えも能力も。だからこそひたすらに力を欲して強くなる事が最善の策だと思い込んでしまった。


「そんなあたしを笑ってもいい。けれどその行動はある意味で功を成した」

「…うちはマダラとの接触、か」

「そう、彼と出会ったのは間違いなく偶然だった。そうして彼はあたしに力を与えてくれると約束をした。」

「まさかあの男がタダでとは言わないだろう」


二つの鋭い視線があたしを射抜く。何処か既視感を覚えるのは彼らが皆一様に同じ赤色の瞳を持つからだろうか。

"豪も才も何もないあたしに何ができる?欲ばかりのあたしに、皆を守れないあたしに――あたしは、…この、

「――命を"」


泣きそうに歪む兄弟の顔を、あたしはただ見つめる事しかできない。



141012

prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -