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大きな瞳を揺らすサスケに小さくほほ笑む
あたしはずっと、サスケに――ううん、一族の誰かに殺して貰いたかった。それはただの懺悔であり戒めであって、只々彼らの中に"うちは名前"という女がいた事を根強くさせるためでもあった。
人並みの幸せを手に入れて、人並み以上の幸せを望んだその時に。大きな大きな不幸に蝕まれ朽ちて堕ちたソレを拾い上げようと伸ばしたその手は届かなかった。
「…ほら、ね」
「どうい、うことだ…」
「あたしの目には、サスケの"絶望"しかうつってないよ」
サスケの腕は、確かにあたしの胸を貫いているけれど。
――ごめんね、サスケ。
「あたしの心臓、もうないの」
「サスケ!‥っ名前!!」
「兄さん…」
サスケを庇うように立ったイタチさんは、やっぱりどうしてか穏やかな瞳にあたしをうつす。久しぶりに兄妹が揃って仲良く談笑――なんて無理なのよ。そう仕向けたのは他の誰でもないあたしなんだから、
「――万華鏡写輪眼…その目は特別。使えば使うほど封印されていく、」
「…兄さんどういうことだ?」
「万華鏡はいずれ光を失う、サスケも読んだだろうあの集会場の石版を。…名前、お前はそれをいつ、誰に―――いや、うちはマダラにいつ接触したんだ」
「きっと、賢いイタチさんなら何と無く分かってるんでしょう?」
あたしが、限りなく忍に近づいたあの日。
唯一イタチさんに弱音を吐いた最後の日、最後の涙と忍道を誓ったあの日
「名前…お前は、」
「…、姉さんは」
「初めは幸せの為だったのに、ね」
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「少し、思い出話でもしようか」
兄妹揃って仲良く談笑なんて、これっきりならまだ皆で笑えてたあの頃と同じ場所がいい。そうでしょう、お兄ちゃん、サスケ――。
141012
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