処刑台の主役 | ナノ


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「万華鏡写輪眼も持っていないサスケが、あたしに勝てるだなんて思えないよ」

「…アンタがどれだけその目を使おうとも、この憎しみで幻が現実へと変わる」


刺すような視線を向けたサスケの瞳には、間違いなく笑顔を浮かべたあたしが居た。踏み込んだ刹那、同じようにこちらへ動くサスケがまたあたしを興奮させるのだ。







ナルトくんやカカシさん、それにサスケの同期の子たちとこの任務に加わってどれくらい経っただろうか。普段暗部に所属している身のためにあまり表立って動けない俺の代わりにカカシさんやテンゾウが動いてくれる。でもそれが俺にとって何よりも歯痒くていつも自己嫌悪してしまいそうになる。
オレだって、サスケを何よりも一番に考えている。だってそうだろう、オレの弟なんだ。でも歯痒い日々も今日で終わりだ。オレを何かと堰き止めていた元凶であるダンゾウの目をすり抜ける事に成功したのだから。何としてもこの目でサスケを見つけ出すと決めている。

木から木へと移る度、枝が軋む音を聞いて何時だったかもこんな風に必死になって走った時があったと不意に思い浮かんだ。
あれは、あの満月の夜の日だ。忘れることの無いオレ達一族の汚点と終点――

忘れた事なんか一度だってない。
あの日、オレは確かに何かに気が付いていた。しかしあの頃のオレは強さにばかり気が行って大切な妹たちの事を無碍にしていた。どうして、何故。そればかり頭を巡ってどうしようもない気持ちに駆られた、あの日。

そう、オレはいつだって一足遅い。
あの子が、名前が何度となくオレに助けを求めていたにも拘らず、気が付いた時には全てを失っていた。それだけじゃない。サスケがあの大蛇丸のところへ行くときにだって…――

"オレは、姉さんを…否――あの女を殺す為に生きて行く"
あの時のサスケは、オレに助けを乞うた名前と同じ目をしていたのに、何も言えなかった。――復讐、その思いがサスケを生かしてくれるならばと、もう大切な人を失うあの絶望感に呑まれるくらいならと。あれは弱さだった、本当にサスケの事が…名前の事が大切ならばあの時に、サスケが里を出て行くときに――名前が一族に手をかけた時に俺が命を掛けても止めるべきだったんだ。

"殺したくなんて無いんだよ、助けてお兄ちゃん、怖い…こわいよ"
泣きながら血濡れた手を向けるあの子の映像は、彼女が俺を惑わすために掛けた幻術だと理解しているけれど、きっと全てが幻なんかじゃない。あの子はとても優しい子だった。ずっと、兄弟を、家族を、一族を…愛していた。


"ドウシテ助けてくれないの…"

ああ、オレはまた遅いのか。

サスケの雷切が、あの子の身体へ貫いて…血を吐いたあの子は―――名前は笑うのだ

"全部オマエのセイだ"
頼むから、嘘だと、これは幻なんだと言ってくれ


140616

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