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サスケは、本当に強くなった。あたしをこの世から消すためにしっかりと力をつけて成長している。これは紛れもない事実
「ねぇ、鬼鮫…最初で最後の頼み事よ」
笑ったあたしに、鬼鮫は少しだけ穏やかに笑って見せたのだ。
きっと間違っていない。あたしが決めて、あたしが行動した。サスケと同じでナルトくんと同じ。ただやり方が違うだけ。笑って抱きしめて「頑張ったね」と言ってくれた人が浮かんで消えた
「サスケ、その目は何処まで見えてるの?」
「お前の、名前の死に様だ」
互いに隙をついては交わしてまたついて、こうやって手合わせするのは何年ぶりなんだろうと高ぶった気持ちの中で考えてまた、あの頃を思い出す。兄さんが約束を破るんだと泣いたあの子はもう、こんなにも強くなってあたしと同じ瞳で殺意を込める。
一瞬の出来事かもしれない。それでもあたしには一生分にも思えるほどの幻の中、幻術を掛けては解かれ、掛けられては解く…そんな繰り返し。
「名前、その目には何が見えている?」
微かに口角をあげたサスケの瞳には確実なあたしの死が浮かんでいた。‥それでも死ねないのよ、
「絶望、かな」
幻術を見切ったサスケは急所のすぐ脇に忍刀を突き刺して「"最後"に聞きたいことがある」と問うてきた。早とちりと自信家なところは相変わらず変わらないみたいで少しだけ懐かしくて自然と口角があがる感覚があった。
「アンタの協力者は誰だ?――否、アンタは誰に協力している」
「…何のことかわからないけど」
非情になりきれない、哀れな子。いつまでもあの頃のあたしの面影を探して優しい姉さんを探って期待する。刀が肉へ埋まる音が沈黙を破る、殺してほしいのになぁなんて思ったのが伝わったかのように動きが止まってあたしを生かす――これじゃ死ねない
「アンタじゃ警務部隊をひとりでやれるはずがない」
「イタチならやれた、って?」
「…無駄な口を叩く前に、質問に答えろ」
ぐっ、と腹を抉る刀に血が噴き出す。ああ、濁った赤だ
「…うちはマダラ。うちはの創立者…彼は生きている。否、生きていた」
「戯言はやめろと言ったが」
「どうしてそう思う?…サスケ、あんたがあたしを優しい姉だと思っていたように、人は皆思い込みで生きているんだよ。…信じる信じないはサスケ次第だけどね」
――野望はある。一族の復興と、ある女を殺すこと
「…やっと、アンタに辿り着いた」
140420
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