処刑台の主役 | ナノ


▼ 05

「かとん!ごうかきゅうのじゅつ!!」


チャクラを溜めこんで一気に吐き出す。
そう教えられた通りに何度も何度も試すが豪火球とは程遠い小さな火の球があらわれる。
一人前、と称されるにはもっと大きくなくてはならないのにチャクラが足りないせいなのか、それともコツがつかめていないのか。強いては"経験"が足りないのか‥、こんな小さな豪火球では威嚇にもならない。


「‥おにいちゃんのはもっと大きかった」


別にイタチ兄に追いつきたいわけじゃないし、ましてや追い抜かしたいわけでもないけれどあたしには一刻も早く力を手に入れなければいけないのだ。

この里はとても平和だ。だからこそいつ襲撃にあってもおかしくない上、あたしはうちは一族だ。写輪眼を欲する者は少なくはない。
イタチ兄もまだ開眼はしてないけれど、きっと今にすごい忍になっていくのは目に見えている。でもそれはイタチ兄の努力の賜物なのだ。


「ん‥もうちょっと」


今日はもう少ししてから終わりにしようと、もう一度印を組んで術を放つ。先ほどよりは少し大きくなったようにも思えるけれど一人前には程遠い。悪戦苦闘、とはまさにこの通りだと思いながら繰り返し練習をしていれば何か気配を感じて中断する。

気配のする方へ振り返れば、驚いた様子のイタチ兄が立っていた。


「イタチお兄ちゃん?こんなところでどうしたの?」

「あ‥ああ、いや。名前の気配がしたからな」


あたしの気配がしたから来たって相変わらず妹想いだなー、なんて心で思いながらイタチ兄へ笑顔を向けようと口端を広げた時にチクリと痛みが走った。どうやら豪火球の練習をしていた時に切れてしまったようだ。
自覚した途端にヒリヒリと痛みが疼きはじめた口元に手を当てて傷口を隠したけれど、イタチ兄にはすでにバレてしまっていたみたいだ。


「家へ帰ろう。傷の手当てをしないと」

「‥もうちょっと」

「ダメだ。」

「…」


けち。小さく呟いたあたしにイタチ兄は困ったように笑ってあたしの手を取った。
困らせたいわけじゃない。でもあたしには時間が無い。もしもあたしがこの世界のお話を知っていたらきっともっと計画的に有効的に行動が出来たのかもしれないけれど、生憎あたしは無知なのだ。


「焦ってはうまくいかないものさ。今日は休んでまた明日やればいい。サスケも名前が居なくて寂しがっているぞ?」


サスケを出しに使うなんてずるい。そんな事言われたら帰ざるえないじゃないか。
渋々、差し出されたイタチ兄の手をとれば、あたしより一回り大きな手があたしの手を包み込んだ。


「明日アカデミーから帰ったら一緒に修行しようか」

「ほんとう!?やくそくだよ!」

「ああ、約束だ。さあ、そろそろ帰らないと本当にサスケがぐずる」

「ふふ、そうだね!ほらイタチお兄ちゃん!はやく!」


イタチお兄ちゃんは、サスケが生まれてもあたしに優しいです。


120531

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