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飛んでいた意識が戻った時、何も無い、ただオレと白だけが続く世界に立っていた。
この手は誰の手だ…?、いや、なんだ…オレの手か…
「この化け物!!」「近寄るな!!」「お前なんか入れてやんねー!」
「風影さま、」「我愛羅!!」「お前とオレは似てるんだってば」
――オレは誰かに必要とされる存在になれたのだろうか?
自身に傷がつく事が無かったこの手はいつだって他人の血で染まっていて、誰かを壊す事だけしかなかった。
ぐっと力を入れれば、オレじゃないだれかが立っている
――何だ…?……オレ、‥?
鏡、だろうか?…オレがこちらをじっと見据えている。
……あれがオレ…、誰かに必要とされたがっていた、オレ…どうして…何でそうなりたかったんだろう…?
――オレとは何だ?
「答えはすぐ目の前」
誰だ?またオレか…?姿が見えない、オレが消える。誰だ?お前はオレなのか
「表裏一体でも、全てが同じじゃない」
「な…じゃ、おま‥は、誰、‥だ?」
――声が出ない、掠れて消える。まだ駄目だ、答えを聞くまでまだ消えたくない。
なのにオレの意思とは別に、どんどんオレは遠くなって次第に見えなくなって、白だけでいっぱいになって‥‥―――
「オレは、……死ぬのか」
――声はもう無い。
目を開いた。小さなころのオレ、またあの世界か‥もう――
誰かが呼んだ声と肩の重みに振り返る。一瞬全ての時が止まったかと錯覚した。さっきと同じ場所だと思っていた、けれど違う。ここは何処だ、それに…、
「ナルト…」
把握しきれない状態にまわりを見渡せば何十、という見た事のある人たちがオレを囲んで、喜んだり、泣いたり、励まし合ったりしていて、ますます訳が分からなくなった。
「…これは…?」
「お前を助ける為に、みんな走ったんだってばよ…」
沢山の人たちに囲まれている中で、ひと際目につく一人の姿。眠っている…、もう目を覚ます事の無い姿。
「…皆、チヨバア様に祈りを」
――聞けば、ナルトたちは"暁"に連れ去られたオレを救うために追いかけてきてくれたと言う。昔から変わらない仲間を想う姿に、オレもなれるだろうか。…チヨバア様もきっとナルトに出会って変わったんだとオレなら言える。
「里に帰ろう」
あの世界で聞いた声はナルトだったんだろうか…――
130211
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