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サスケにとって、あたしは復讐する対象でしかないだろうけど、復讐し終わった時サスケが壊れてしまいそうだなんて、場違いながらも思ってしまった。
「大きな技は行動が制限される」
「なっ…」
"千鳥"という技を纏う頼りないサスケの腕を掴んでしまえば、簡単に動きを封じることが出来た。あたしの手を離そうともがくサスケをそのまま壁に押し付けると細かく息を吐き出しながら脅えた瞳にあたしを写す。
空いた手でサスケの頬を包み込むとナルトくんの空気が急変して無意識にサスケを腕に閉じ込めてしまった。幸い鬼鮫はナルトくんを見ていたおかげで気付かれる事は無かったことに安堵しながらゆっくりとサスケを解き放つ。
「名前ね…、ッ」
「サスケには教えたい事、たくさんあるんだよ」
サスケの腕をまとめ上げて、そのままナルトくんとは反対の方へ投げ飛ばせば受け身もとらずに壁にぶつかって床へと倒れ込んだ。その姿に失笑しつつ鬼鮫がナルトくんのチャクラを削ったのを感じながらサスケの元へ行けばやっぱりただ脅えただけの弱いサスケが居て興が冷めてきた。
「ねえ、あたしが怖い?」
「せっかくの別嬪がもったいないのォ」
サスケに伸ばした手は、第三者の声によって止められた。振りぬかなくても感じる事のできる強者の気配に唇が薄く伸びた。
「もういらしたんですか、自来也様」
「ナルトからワシを引き離すために幻術をかけるたァ…女ってのは怖いのォ」
思ったよりも早く自来也様が来た事は少しばかり痛手だけど、今回は邪魔者はいないしあたしと鬼鮫、ふたり掛かりでなら勝算は低くてもナルトくんを奪う隙ぐらいは作れるだろう。
「目当てはやはり、ナルトか」
「ふぅん、情報源は自来也様…あなたでしたか」
道理でカカシさんも知っているわけだ。自来也様が大蛇丸を追っているのは聞いた事があるし…恐らく大蛇丸を辿って付いた先があたしたち暁だったってところだろうね。
「ナルトくんを連れて行くのが"暁"から下されたあたし達への至上命令。自来也様には悪いですけど、ナルトくんは貰っていきますよ」
「…ナルトはやれんのォ」
あぁ、もうこの空気ってほんとうに、…ゾクゾクする。
130201
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