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次に起きた時には、彼の姿は無かった。
それが妙に心細くて落ち着かなかった。
丁寧に巻かれた包帯を見ながらこれからのことを考えれば傷ではない痛みが頭を刺激して自嘲的な笑みが出た。
やっぱり、あたしは弱すぎる。今回の件だってあの人がいなければ成功していたかどうかも危うかったのだから。傲慢だと笑われてしまうだろうか、愚かだと思われているだろうか、そう考えてみても所詮あたしと彼の関係なんて契約上のものでしかないのだから考えるのも無駄だった。
弱ければ棄てられる、邪魔になれば消される。
ただそれだけの関係なのだから
「起きたか」
「ご迷惑をおかけしました、随分楽になりました。」
「そうか、」
微かに香る血の匂いに少しだけ眉を寄せたのに気がついたのか、さりげなく距離を置いた彼につい笑ってしまえば拗ねたようにさらに距離を置くから可愛いだなんて、思ってしまった。ついついにやけてしまう頬を抑えて必死に堪えていたというのに、眉間にしわを寄せた彼に額を指で弾かれてしまった。
「‥我慢してたのにー」
「我慢し切れてなかった」
「それはごめんなさーい」
己を纏う雰囲気とは裏腹にマダラさんは意外と茶目っけのある人らしい。
額を抑えたままのあたしにクツクツと笑う姿はやっぱり優しいお兄さんって感じでしかないのに、なんて考えてやめた。
あの日のことはもう過去でしか無くて、真実を知らず生きていける人たちを見てあたしはどう思ってしまうのか。知らぬが仏、まさにその通りの出来事でしかないから。
あたしからは会うことはできないけれど、きっといつか、最期は彼らでいっぱいであるように。そう願いながらあたしはこれからをこの人の傍で生きていくんだ。
そう決めたのはあたし。
120915
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