処刑台の主役 | ナノ


▼ 21

最近うちはの人間があたしの監視をするようになった。
あたしを監視している人たちは暗部でもそれなりの実績を誇る人達だけれどあんなにも憎悪や畏怖を含ませた視線を向けられれば嫌でも気付くと言うものだ、と思っていたけれどすぐ近くに居るサスケはまだしも、母ですら塵も気付いていないところをみると実績は本当なんだろうとも思う。

気が滅入りそうになるくらいの視線を感じながら家の縁側でぼうっとしていれば微かな違和感に気が付いた。
ほんの一瞬、空気が淀めいたような。
暗部の動きが無いあたり本当に極僅かな変化だった。
けれど確かに、何かがあった。


「あら、名前どこかに行くの?」

「‥少し出かけてきます。」


縁側から外へ駆け出せばいくつもの気配がついてきて思わず苦笑が出てしまった。彼らはどこまでもあたしを監視する気でいるらしい。
それは少し困った事になったなんて思いながら足を動かした。
これから行くところはあたしが隠れて修行をしていた場所なのだから。あそこを複数に知られるとなるとこちらとしては少し…いや、かなり嫌である。


「…撒くか」


そう決断すれば初歩とは言え目晦ましぐらいにはなるであろう煙幕を使いながら影分身達を走らせれば面白いぐらいに食いついた彼らにクスリと笑い声がこぼれ出た。

暗部の気配が薄くなったのを確認したあと地上へと戻る。服に付いた埃や土を軽く掃った後は周りに気にしながら違和感の正体を求めて走り出した









「…やっぱり、あなたでしたか」


薄々は気が付いていたんだ、この違和感の正体に。だからここに来るまでに躊躇は無かったし覚悟もしてきた。


「お前がなかなか来ないからな、来てやったさ」

「頼んでいませんけどね」

「ふっ‥あの時よりも良い瞳をするようになったじゃないか」


それでも、所詮あたしのしてきたものなんて生半可な覚悟でしかなくて、今にも震えだしそうな体を叱咤することが精いっぱいだった。
相変わらず飄々とした雰囲気を纏いながらも隙は一切見せない目の前の男は本当に何者なのだろうか。


「…あなたは何者なのですか」

「まだ教えるわけにはいかないな。‥お前がオレと共に来るなら別だが?」


表情は見えないけれど、どこか愉しそうな様子の男に微かな苛立ちを感じてしまう。


「あたしが‥、あたしが力が欲しいと望んだらあなたは何をしてくれる?」

「とんだ欲深い小娘だな。お前はオレに何をするという?」

「あたし‥?あたし、は…、」


豪も才も何もないあたしに何ができる?


「あた、しは‥、」


欲ばかりのあたしに、皆を守れないあたしに――


「あたしは、…この、命を、」



そう言ったあたしに対して男の真っ赤な目が弓なりに曲がったのを見た。


120716

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