処刑台の主役 | ナノ


▼ 20

あたしの首を絞める父に容赦はなくて、あたしが窒息死をする前に首の骨が折れるんじゃないかなんて変に冷めた頭で考えた。
首が折れたときは痛いのだろうか、あたしが任務だと言って奪ってきた人たちもこんな最期を思ったのだろうかとたくさんの事を考えた。それは時間にしては数秒にも満たないのかもしれないけれどあたしには随分と長く感じられた。

ゆっくりと霞んでいく世界に笑みが出た。


「…何を笑っている?」


遠くなっていく世界の中で微かに父の声が聞こえたけれど、すでにあたしには返すだけの気力は残っていなかった。
それでもこの体は、というか忍の体質はこんな時にでも発揮するものでこちらに向かってくる気配はしっかりと感じ取ることができた。

遠かった気配は真っすぐにこちらに向かっていて一度だけ止まったかと思えば次の瞬間には部屋の前に立っていた。
恐らくあたしと父上の気配を感じ取ったからだろう、気迫をこもらせた状態で気配の人物は静かに父上と呼べばあたしは無残にも床に落とされた。
ドサリ、受身もまともに取れず重力にならって落ちた体は鈍い痛みが走り、急に入りこんだ酸素に咽た所為で涙が止まらなかった。
あたしは弱いんだと思い知らされた。


「何を、していたんですか」


いつの間にか部屋に入ってきていた気配があたしの体を包み込んだ。
父とイタチ兄の殺気が部屋中を占めていくのを全身で全神経で感じて、気が狂いそうなほどの空気の中あたしが冷静で居られたのはイタチ兄がずっとあたしを抱きしめていてくれたからだろうか。

吐き気を感じるくらいの苛立ちと哀しみを抱えながら不気味なほど冷めた頭に自嘲的な笑みが出て父の訝しげな視線が刺さった。



「…もういいや。ふふ、もういいよ」

「名前…?」

「くっ‥ふふっ…、イタチ兄さ…ううん、イタチさんもフガクさんも」

「‥おい、名前…しっかりするんだ」

「‥フガクさんがこうなったのも、イタチさんがこんなにも苦しむのもぜえんぶ、木の葉がわるいんだね」


そっか、そうだよね。じゃなきゃ皆あたしの大好きな皆なんだもん。変わったんじゃないんだ、よかった。変えられてたんだ。そっか、そうだったんだ。じゃあ元に戻してあげなくちゃ

あたしの肩を掴んで何かを呼び掛けるイタチお兄ちゃんにふわり微笑んだとき、あたしはあんなにも酷く傷ついた様子のイタチお兄ちゃんを初めて見た。


―――ごめんなさい、ありがとう、たすけて


「だいじょーぶだよ。すぐに元通りになるからね」


―――壊れたのはあたしの方なのに。


120713

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