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うちはのクーデター計画について火影様に直訴しにいってから既にひと月が経った。
けれど火影様はあたしに出来ることなど何もない、とあたしと話すことは何もないとそれだけでまともに取り合ってくれなかった。
イタチ兄に話をしてみようかと思ったけれど多分イタチ兄も火影様と同じように気のせいだ、とか言って取り合ってくれないんだろうな。
何で皆分かち合えないんだろうか。
こんなにも幸せに、笑顔に溢れたこの世界でそれ以上を望むなんて欲張りにも程がある。あたし達の為だなんて言って犠牲になるイタチ兄を見ると心が痛い。けれど同じくらい嬉しいと思ってしまう自分がどうしようもなく情けない。
「お兄ちゃん。」
「どうした?…何かあったのか?」
「…ううん、」
縁側に一人座って空を見上げるイタチ兄の隣に座れば確かにあたしの隣にはイタチ兄の存在を感じる事ができるのに。
「痛いよ、痛い。」
「何処か怪我でもしたのか?」
「違う、ケガなんかしてない」
「…名前本当にどうしたんだ」
忍の心得なんて知らない。涙を見せる事がいけないなんて知らない。無知な餓鬼だと笑われてもいい、愚かな奴だと罵られてもいい。ただあたしは今ある目の前に存在する家族と幸せに浸っていたいだけなのに
「お兄ちゃんが犠牲になる必要なんてないんだよ」
みっともないと思われてもいい
繕うようにイタチ兄に抱きつけばイタチ兄の肩が揺れたのを感じたけれど、今はね、今だけはこうしてほしい
「ねえ、うちはが大切?」
「…名前、何があったんだ。」
「いいから答えて?」
「……大切だ」
「そ、っか」
溢れる涙は決意の涙。
もう泣かないから、非情になってみせるから――
120612
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