処刑台の主役 | ナノ


▼ 15

父から渡された巻物には豪火球をはじめとする火遁の術がたくさん綴ってあった。察するに最低でもここにある火遁を覚えろという事なのだろうか。

悩んでいても仕方ない、納得いかないけど巻物を持っていつもの禁断の森へ行けば珍しく先客が居た。息を殺して身を潜め、少し悪いとは思いながらも会話に耳を傾けた。


「…ってんだろ、」

「で、でもよ」

「フガクさんは…」

「殺らなきゃ殺られるんだぞ!」

「わかってる!!‥くそっ、」


父の名と共に聞こえてきたのはクーデターを仄めかす内容であんまりにも驚き過ぎて一度息がとまった気がした。
…だって、ありえない。父を含めたうちは一族の人間がクーデタ―を計画しているなんて。

今ここで見つかれば殺され兼ねない。
出来る限り気配を消して彼らが居なくなる間、思考を張り巡らせる。


「…お兄ちゃんは、」


きっとイタチ兄はこの事を知っている。
だからこそ、力を欲し傲慢なふりをしあたし達を護ろうとしているはず。あくまでこれはあたしの推測でしかないのだけれど。

この、嫌な予感が当たらなければいいのだけど。

ぐっと力を込めた手に違和感を感じて見れば父から借りた巻物を思い出した。
…そうだ、あたしはあたしの出来ることを精いっぱいしよう。うちは一族が滅びようと関係ない、あたしはあたしの幸せを守る為に傲慢になってやる



「…火遁・鳳仙火の術!」


イタチ兄の妹というレッテルは、思ったよりもあたしに重く圧し掛かっていた。周りの期待に応えるために重ねてきた修行と勉強。良いのか悪いのか上層部には評価はされていたけれど、それ故にあたしは近々卒業することが決まっていた。


120609


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