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先日の一件があってから父はサスケやあたしに構うようになった。
サスケは純粋に嬉しそうにしていたけれどあたしはどうしても素直に喜ぶ事が出来なかった。だって、あたしたちに構う代わりにイタチ兄には見向きもしなくなってしまったのだから。
そしてあの一件からもう一つ変わった事がある。
「名前」
「はい。何かご用ですか?」
それは、あたしが父に常に敬語で話すことになったことだ。これに関しては母から指摘を受けて変えるようになったのだけど、正直不満でいっぱいである。どうして家族間で敬語じゃないといけないのだろう。家族ってそんなに堅い物なのだろうか?
「お前は、いつだったか一人で豪火球の術を会得したが誰に教わった?」
「独学とお兄ちゃんに…、その、あとは父上の書斎にあったものを…拝借しました」
勝手に拝借した事を伝えるのはまずかっただろうかと身構えたけれど父は特に気にした様子も無くただ一言そうか、と呟いて前を見据えていた。
最近の父は掴めない。一体あたし達に何を望んでいるのかもわからないし、イタチ兄の事をどう思っているのかもわからない。表情に出さないのは父の性格故からか、忍の性からか
「お父さんは、…父上は兄さんの事をどうお思いですか」
先日の事も含め、今までイタチ兄の事を見てきて、どう思ってきたのだろう。…あまりいい事は期待していないけど
「サスケにも伝えたが…、名前も‥イタチにはもう関わるな」
「!、…な、何をおっしゃっているか…っ、」
「あいつはもう今までのあいつじゃ、ない」
今までのイタチ兄とは、何?お父さんの見てきたイタチ兄とは、どんな人物?
「…お言葉ですが、あたしは今まで通り兄さんと関わりを持ちます。それに関して父上に指図されるつもりはないです」
「あいつは!!!‥っ」
初めて、父に怒鳴られて思わず体を震わせた。
張り詰めた空気の中、父は酷く弱弱しく頭を垂れた。どうしてだと父は言った。どうしてこうなってしまったのだと父は自身を責めていた。そんな父を初めて見たあたしが、父をこれ以上責めることなどできるだろうか。
「…口が過ぎました。兄さんの様子はあたしが見ます。」
「‥ふっ、お前がか」
「ええ、監視する必要はないです。」
勝手にしろ、とぶっきらぼうに呟いた父に一礼してその場を立ち去ればちょうどサスケが修行から帰ってきた。
「姉さん!ただいま!」
「おかえりなさい、サスケ」
結局父の深層はわからなかったことに苦笑をしながらも、胸に飛び込んできたサスケをしっかりと抱きしめた。
まあ、今はつかの間の癒しに酔いしれることにしようと思う
120609
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