処刑台の主役 | ナノ


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何もできない自分が悔しくて、目の前で幸せが奪われてしまいそうで怖くて、キツクきつく目をつぶってしまえば何も見えないことに安心して暗闇に縋り付くあたしを、あたしは愚かだと笑うだろうか、愚弄するだろうか。

左手に重みを感じて目を開けば息を乱したイタチ兄が心配そうに見つめていた。たどたどしくあたしの頭や顔、首筋から肩へと触れていき最後にあたしをきつく抱きしめた。いつも冷静なイタチ兄にしては珍しく動揺してるな、なんて他人事のように想いながらされるがままになっていたあたしにイタチ兄は悲痛に顔を歪ませて「大丈夫」とうわ言のように呟いていた。
それは、あたしに言うというよりは自身に言い聞かせているようにも思えたのだけれど。


「イタチお兄ちゃん、大丈夫だよ。大丈夫。」


――イタチお兄ちゃんを悲しませるものは全部あたしが消してあげるからね。


そう呟いたあたしに、イタチ兄は弾かれるように抱きしめていた体を離してあたしを驚いたように見ていたけれど、祖父がやってきたことによってすぐに逸らされた。


「イタチよ、話がある。」

「…はい。」

「おじいちゃん、あたしは?」

「名前はサスケと共に居れ」


不服そうに祖父を見つめたあたしに、イタチ兄は軽くあたしの頭を撫でた後祖父に付いていってしまったのであたしも祖父の言うことに従うようにサスケの元へと歩き出した。


「あらあら名前ちゃん、サスケちゃんったらもうこんな気持ちよさそうに寝てるのよ」


ふふ、と上品に笑う祖母はどこか母にも似ているように見えた。うちはの遺伝は凄まじいとつくづく思う、贔屓目無しにうちはの人間は男女ともに美人が多いのだ、かく言うあたしはどうなのかは知らないけれど。


「ねえ、おばあちゃん。木の葉を襲った九尾はどうなったの?」

「そうねぇ」

「どれだけの人が死んでしまったの」

「…そうねぇ」


先にも見た、悲痛に歪む顔にあたしはやっぱり九尾も幸せを奪うものへの憎悪で飲み込まれていく感覚がした。


120606

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