▼ 09
家へ戻ったあとも、先ほどの出来事が思い浮かんで悶々としていると何やら外が騒がしいのに気が付いた。
窓から外を覗けば見知った人を始め近所のおにいちゃんから隠居したはずのおじいちゃんまでさまざまな人が慌ただしくあちこちを行き来していた。
いったい何が合ったのだろう。
窓の鍵へと手を伸ばすのと同時に、ノック音が部屋に転がった。思わず固まった腕を下して返事をすれば何やら慌てた様子のイタチがサスケを抱えて立っていた。
「お兄ちゃんどうしたの?外で何が起きてるの?」
「いいか名前。今すぐサスケを連れて祖父の家へ行くんだ。場所はわかるな?」
「え‥ど、どうしたの?」
「祖父達には伝えておくから。大丈夫、心配するな」
あたしの質問には答えずにそう口早に言われてしまえば頷くほかなく、混乱する頭で頷いた。サスケをしっかりと抱えて祖父の家へと走り出す。その道中に聞こえてきた"九尾"という言葉が耳に焼きついて離れない。
九尾、嘘だ、だって‥九尾は。
「あぅ、あー」
「ごめんねサスケ、もうちょっとだからね」
ただならぬ雰囲気を感じているのか、今にも泣きそうにあたしの服を強く掴んでいるサスケに笑顔を向けて力強く抱え込む。
祖父の家が見えてくると、イタチ兄が連絡していたのだろう、祖父と祖母が家の外で待っていた。あたしたちの姿を捕えると安心したように破顔してサスケもろとも強く抱きしめた。
「よく来た。名前ありがとうな、偉いぞ」
「名前ちゃん、よく頑張ったわね。安全なところへ行きましょう」
冷静になっていたとはいえ、少なからず恐怖を抱いていたあたしは2人の姿に泣きそうになってしまった。、だけれどここはまだ安全とは言えないらしい。
サスケを祖父に預け、あたしは祖母に抱えられて落ちないようにそっと祖母の首に手をまわせばそれが合図と言うように走りだした。
少しずつ離れていくうちはの集落にあたしは漸く落ち着いて周りを見渡して目を見開いた。狐…だろうか、大きな何かが暴れているのだ。
間違いない、あれが。
「九尾…」
呟いた言葉は誰にも届かなかった。
あたしは、知っていた。
九尾も、今宵四代目火影が死ぬことをも
「…許さない」
ぎり、と嫌な音を立てた奥歯。
許さない。あたしの幸せを奪う輩は、絶対に――許さない。
血に飢えたその目が妖しく光る。
120605
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