愛迷イズム | ナノ

32

私の忍道ってなんだろう、


 無償の喜びに混じる


帰還したナルトが開口一番口にしていたセリフに私は答えを見つけることができなくて随分と悩んでしまっている。


「 まっすぐ自分の言葉はまげねェ!それがおれの忍道だ 」


そう言って照れくさそうに笑ったナルトが眩しくて、ナルトを囲むサクラちゃんやサスケ、それにカカシ。みんな同意するように笑ったり頷いたり、サスケは相変わらずだったけれど、それでも何処か当たり前だという風で、なんだか急にナルトが遠くに行ってしまったようだった。
少しだけ心がさみしく感じた、けれどとても嬉しくも感じたのも本当。

私の忍道…、この世界に生まれ落ちてから生きる術を知るため貪欲に力を求めてきた。今私には自分を守るだけの力はあるし誰かの力になる余裕すらあると言える。でも、私には忍道なんて、無い。

こうなりたい。だとか、こういう事をしたい。そんなものは一つとして無かったし必要すらなかった。ただここで、この場所で里のためと理由をつけて己を生かすべく生きてきた。

ナルトのように純粋に生きられたら、と思う反面、現実がそうも甘く無い事も知ってしまっている経験値。まるで板挟みのように私を挟み込んでしまっている。


「…私たちは経験しすぎたのかもしれない」


そう、あの子たちはこれからたくさんの経験をしてたくさんの事に気づくことができる。いうなれば、まだ修正がきくのだ。それに比べて私はもう修正をするには如何にも進み過ぎた。
育ての親、という肩書が近いうちに解消されてしまうまえに。あの子にはたくさんの愛と慈悲、家族と言う唯一無二の存在を教えてあげたいと思う私はおこがましいだろうか。



「名前ねーちゃん!」


ぎこちない表情で、私の名前を呼ぶ彼もきっと。両親のように強く逞しく、それでも優しくて、気付けば人が集まるような、そんな人になっていくんだろう。だってこの子はあの二人の愛息子なんだから。


「名前姉ちゃんっ、た‥ただいま!!」


へへへ、と恥ずかしそうに笑ったナルトを心配そうに見つめる彼の仲間たちに、どうしようもなく泣きそうになって、笑った。


「――おかえり。ナルト」


130308
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