28
怪我してないか、ちゃんとご飯食べてるか、少し不安だけれど彼はもう、独りじゃないもの。
無機質な愛を
「それじゃ、テンゾウは北を」
「はい。」
ナルトが任務に出ているからと言って、S級ランクやA級ランク任務に極秘任務…と人使いの荒い火影様につい、眉間に皺が寄るのはしょうがないと思う。一息ぐらいつかせろと言う本音を出さないだけ偉いと思ってほしいものだ。
そうして黙々とこなしてきた私に気をよくしたのか知らないけれど、遂には暗部とのツーマンセルでの任務に至ったわけだ。
「…テンゾウ、聞こえる?」
「はい、聞こえています。…標的確認しました。」
「…やっていいよ」
そう呟けばインカムから風を切る音に標的であろう男の声、少しの間と共にテンゾウの任務完了、との声。何だか変な高揚感と喪失感が渦巻いていく気がして木の陰に座り込む
少し疲れたのかと兵糧丸を口に含んで空を仰げば明るい日差しには浮いている漆黒に染まった一羽のカラスと目があった
真っ黒な瞳と視線が合わさった瞬間、違和感が包み込む。いや、違和感と言うよりはどこか懐かしい気持ち…、だろうか
ジィっと互いに息を殺して見つめあっていると不意にカラスの瞳が紅く染まった気がして思わず立ち上がってしまった
「……イ、タチ?」
嗚呼、そうだ。
イタチ…そう、イタチが昔、得意としてよくカラスを出していた。
…かといって、あのカラスがイタチの出したものとは限らないし、どちらかと言えば可能性は低い。そう考えながらも念のために回りの気配に気を配るが怪しい気配は見当たらない。まあ、イタチなら気配を完全に消すことはそう難しいことでは無いかもしれないから何とも言えないのだけれど。
「名前」
「!!」
何処からともなく聞こえてきた声は、私の記憶するものより低いけれどイタチの声だ。
周りを見渡してみても気配も無ければ、声の出所すら掴めない。
「イタチ、よね。……何の用」
「…アイツは元気か」
「そうね、今は任務中よ」
「…そうか。」
開口一番、弟の安否を確認だなんて相変わらずな男。
でも変わりのないイタチに安心したのも事実。あんな事件を起こしたんだもの、人格が変わってしまったっておかしくない。
私たちは忍である前に、人だから。
「名前は上忍になったらしいな」
「…何で知ってるのよ」
「オレをなめるな」
「…ナマイキ。」
随分見ないうちに生意気な餓鬼になってしまったようだ。昔は可愛かったのに、昔は。
微かなショックを受けながらイタチの分身鴉を見つめれば、世界が歪んで廻る。
しまった、と思った時には既にイタチの術中で周りを見渡せば昔、よくイタチに付き合わされた演習場だ。大きな木の陰に僅かな気配を感じて目を凝らせば酷く懐かしい彼の姿。
「…久しぶりね」
「…ああ」
どちらともなく互いの体を寄せあえば、二人が1つになったような感覚がした。キミがキミじゃなければ、あんな事にもならなかったのかな。…なんて、過ぎた事なのに。
120501
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