26
アカデミーを卒業し、無事下忍となったナルトは、任務に駆り出される日々を過ごしていて近頃では二人で過ごす時間はめっきり減ってしまった。
キミと同じキモチ
初めて里の外に出られると言うことで浮かれっぱなしのナルトに少し不安を抱きながらも見送るために一緒に家を出た。るんるん、と鼻唄でも歌い始めそうなナルトを見ているとなんだか複雑な気持ちになってきた。
――任務は遠足じゃないのよ?
思わずそう言った瞬間、笑顔だったナルトも眉を下げてしゅんとしてしまって、つられるように私も悲しくなってきた。
「…な、なるとくん。そんな顔してもだめ」
「…っ、いいってばよ!もう!」
「あっ、ナルト!」
あーもう。何やってんだろ
1人で行ってしまったナルトの後ろ姿を見ながらため息をひとつ。ぐしゃり、ぐしゃり、と髪の毛を乱暴に掴んで雑ぜる。髪が乱れるのも気にしないでぐしゃぐしゃとしていると、ふと手を捕まれて見上げれば暫くぶりのアイツの姿。
「その悩んだ時の癖、やめなっていってるでしょーよ」
「…門で集合でしょ、何で居んの」
「無視かコラ。…向かってる途中に名前の姿が見えたからネ」
ナルトの班長であるアイツ…カカシが何故か(十中八九 遅刻してきただけだろうけど)目の前にいて、更には私の乱れた髪を手櫛で整えてくる。
「なーに悩んでんのよ?」
「……別に」
「別に、って顔じゃないけどねぇ」
鋭いっていうか、敏感というか、いつもカカシには悩んでたりするとバレる。私だって仮にも上忍である以上、感情をコントロールする事は勿論、表情に出す事なんて滅多にしないのに、開心術でも使っているのかと思うぐらい心の内を読まれてしまうのは、私が分かりやすいからか、それともカカシが鋭すぎるからなのか。
「ま、言いたくないならいいけど。溜め込むぐらいなら頼れって言ったよね?」
「ん、…今度、話、…聞いてくれる?」
背の高いカカシの目を見ようとすれば、自然と見上げる形になってしまって、酷く情けない気持ちになったけれど、カカシは一瞬驚いたように目を見開いたあと、嬉しそうな恥ずかしそうな笑顔で私の頭を優しく撫でてくれて、どうしようもなく酷く安心した。
「じゃ、とりあえずアイツ等ん所行くか」
――ナルトの見送りするんでしょ?
どんなに私が隠しても、知らぬふりをしたって、カカシには敵わないな。なんて柄にもない気持ちになってしまったのは、絶対に言ってやんない。せめてもの意地ってやつ。
「うん。…カカシも、」
「ん?」
「しょうがないから、ナルト達のついでに無事を祈ってあげる」
間を置いて、嬉しそうに笑うカカシを見れなくて思わず見上げた空は、今の私の心情を表すかのように晴れ晴れとしていて綺麗だった。
(キミにはいつも助けられる)
120407
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