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里を見渡せる人気の少ないところで、二人ならんで腰掛けると柔らかな風が私達の髪をさらいならがら通りすぎていった。
たまにはまったりお話を
暖かい陽にウトウトし始めた我愛羅を膝の上に乗せてあげれば、我愛羅は私の腕を掴みながらに夢の世界へと落ちていった。
暫く我愛羅を抱えたままじっとしていたら、誰かに名前を呼ばれたので振り向くと、この里で唯一(我愛羅は別として)私と接してくれる人がいた。
「あ、夜叉丸さん。おはようございます」
「おはようございます、名前さん。いつも我愛羅様がすみません」
夜叉丸さんは我愛羅の世話係というものらしいけど、最近私が我愛羅を連れ出すので、こうやって度々私に挨拶にくるのだ。初めは一々挨拶されるのが嫌だったんだけど、まぁ…慣れとは恐ろしい。
「我愛羅、寝ちゃったんで少しお話しませんか?」
暇潰しで悪いんですけど、と少し申し訳なく思いながらも伝えれば、綺麗な笑顔で快く了承してくれた夜叉丸さんに、(女の私が言うのもなんだけど)やっぱり可愛らしい方だと思った。本人には言わないけど。
他愛の無い会話をしていたら、夜叉丸さんがなんだがモジモジと落ち着きが無くなったかと思えば、チラチラと私を盗み見ていることに気が付いた。気づいたからといって何かするわけでもないんだけれど。
「…あの、名前さんって、」
「ん?なあに?」
意を決したように、少し意気込んで切り出した夜叉丸さんに首をかしげれば、視線を慌ただしく動かした。…私何かしたかしら。
「あの、名前さんって、…子供の扱いな、慣れてますよね!」
数分掛かって聞きたかったことはそんなことで、少し緊張していた体が急激に脱力した気がした。
「うーん、息子が居るからですかね?」
やんちゃ坊主なんですよ、なんて笑いかけたら何故だか夜叉丸さんは金魚の様に口をパクパクさせて驚いていた。
「(…デジャヴ?)」
「ごごごご結婚なさってるんですか?」
分かりやすく動揺しながら聞かれた質問に、苦笑いが出た。
「養子なんです。孤児だった子を引き取ったんですよ。」
そう言って笑えば、夜叉丸さんは息を吐いて苦笑した。
――そんなに、驚く事なのかな
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