01
――‥何もかも疲れて、何もかもがくだらなくて、私はすべてを放棄した。
それでも神は私を休ませてはくれないようだった。
転生とか、輪廻だとか再有なんて信じてなかったし興味も無かったけれど、こうして体験してみると実に興味深い経験だなんて考えて、今の現状を受け入れる。
「人生」と言う名の物語
一度自ら絶った人生を、忍世界なんて理解し難い世界で再開した私は不自然なほど大人びた幼少時代を送ってきた。
異端なものはどの世界でも弾かれるもので、アカデミー時代では想像通り、というか予想通り周りの子どもたちには受け入れて貰えなかったけれど差ほど気にならなかったのは両親や、周りの大人たちが私以上に気にしていたからなのかもしれない。
「今日も1人ですか」
「1人以上に見えるかしら?」
下忍になっても班の子とあまり馴染めなくて比較的1人でいる私をわざわざ探してくる彼も過保護な大人たちの一人。まあ、彼はまだまだ子供なのだけど。一回りも下の子に心配される私っていったい、と自嘲するのも慣れたものだったりする。
そして会うたびに確認をしてくるこの人はサドなのかと彼の今後に心配を感じるのも致し方無いと思う。
「いや、見えないですね」
「眼科の必要はないようで」
素っ気ないいつものやり取りが少し心地よいのは私が人との関わりが少ないからなのだろうか。なんて
「そうだ、今日は修行に付き合ってほしいんです」
「…キミの修行に?」
「ええ、俺の修行に」
いやだなぁ、なんて思いながら彼を見つめれば無言で私の手を取って何処かへ連れて行かれる。
「ねぇ、やるなんて言ってない」
「そうですね」
「…このサディスト」
「なに?」
「…別に」
睨むなんてずるい。黙るしかないじゃない。
ジト目で彼の背中を見つめれば漸く振りかえって眉を下げて微笑んだ。
「少しでいい、気付いたことを教えてほしい」
だから見ててほしい。と申し訳なさそうに言われれば、私だって良心というものがある限り邪険には扱えない。ひとつ納得いかないのはこう言えば私が何も言えなくなると分かってやっている事だ。
大きな木の幹に腰をかけ、私の分身と戦う姿を観察していても相変わらず、彼の動きには無駄がない。計算され尽くしたタイミング、見本通りの綺麗な型の体術。彼に注意することなんて無いに等しいのに…、でも敢えて言うならば
「右の突きのあとの蹴り、僅かに軸がずれてる。」
「…そうですか、」
人よりも劣っていた私。生きる術を見つけるためにずっと、人を観察して幼少時から忍術や体術をしてきたからか、自然と私は洞察力に長けていた。
「キミ以上の人は見たことない。」
「…世界は広いですよ」
褒めるとはぐらかす彼にはもう慣れた。意外と可愛い彼を知るのはきっと私だけ、それは少しの優越感
「キミはきっと、損をするわ」
「…損、か」
「私は一途よ。気に入った人は裏切らない」
表情はきっと現れてないだろうけど、内心なんだか焦っている自分が居る。この一瞬、彼が脆く儚く感じてしまったのはどうしてだろう
「…不思議な事を言いますね」
自嘲的な、複雑な表情で息を溢した彼に近づいて耳元に口を近づければ、反射的に身体を引いた彼を掴んで拘束する。少し強引だけどきっと大事な話。
『 』
「っ!!」
「私結構気に入っているのよ、イタチの事」
それじゃあね、と一言声を掛けてから背を向けて私は帰路へと着いたのだった。
―‥これは、私の物語。
運命は偶然と必然の巡り合わせ
111104
120105(一部変更)
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