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またね、と言えば大量の砂が私の身体を包みこんだ。
思いの分だけ強くなれる
暗くなった視界の中で、血生臭い匂いや、憎しみと悲しみの念、そして彼自身に対する恐怖の念が私の中に流れてくるのを感じる。
それは、このまま念を感じ続けていれば私自信が飲み込まれてしまいそうなほどに、痛くて激しいものだった。
「…我愛羅、大丈夫だよ」
砂がギシギシと体を締め付けて若干痛みと息苦しさを感じながらも、ハッキリと口にすれば、ほんの少し力が弱まった。
「また、明日会うって、約束するわ」
体を締め付ける痛みはすでに消えていて、ゆっくりと視界に明かりが入りこむ。
眩しさに一度目を閉じてから、もう一度目を開ければ、今にも泣きそうな我愛羅が私を見つめていた。
「私は大丈夫よ」
「ぁ、で、でも」
「君はこれから、変わればいいのよ」
意味が分からないみたいで、疑問を浮かべる我愛羅に一歩近づけば、彼も何故か一歩下がってしまう。
何度かそれを繰り返すと、私はなんだかおかしくなってしまって吹き出してしまったけれど、我愛羅も小さく笑い声を溢したことで、漸くピリピリとした空気が失せ穏やかな雰囲気に変わり安堵のような、温かい気持ちになった。
「我愛羅のその力は、コントロールがちゃんと出来れば確かな強さになるわ。」
「でも、皆は、」
「皆が我愛羅を嫌うから、守りたくない?」
「そ、そんなことは…!」
「じゃあ、君はその力に飲まれて大切な人を傷つけても平気?」
「大切、な…?」
そう呟いて、考え込む我愛羅にゆっくりと近づけば、今度はちゃんと彼の元にたどり着いた。
我愛羅の頭を優しく、丁寧に撫でてあげると彼は安心したような笑みを浮かべた。
「大切な人って、案外単純に考えると見つかるものよ?」
「っ、でもボクには、そんな…、」
「焦らなくていいのよ。」
明日見つかるかもしれないし、実は気付いてないだけかもしれないしね?―…そう続けた私に、無理やりといった感じだったけれど納得したようだ。
そして、何か決意したように彼は私の目をしっかりと見つめてこう言った。
「僕は、名前さんを守れるくらい強くなる。」
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