09
漸く私たちを狙う輩を撒いて街はずれにある演習場らしき所へ出てきた。気配を探ってみるが一応異変は無いようなので我愛羅をおろすと、我愛羅は急いで私の手をきつく握るので思わず笑みがこぼれた。
重なる面影に口づけ
風が吹くたびに砂が浅く舞うのを気にせずその場に座り込めば私にならって我愛羅も隣に腰を下ろした。
「まだアツイ?」
「ううん…もう、大丈夫」
胸の中心辺りをぎゅっと掴んで切なげに言う我愛羅を膝の上にのせてしっかりと目線を合わせる。透き通るような綺麗な瞳。穢れを知らない、無垢な彼
「それはね、きっとキミがもっと大きくなったらわかるよ」
「…が、あら」
「え?」
「があら、って、呼んで、」
照れたような我愛羅があまりにも可愛いから、「可愛い!」と半ば叫ぶように抱きしめた私に戸惑ったような声が聞こえたけどしょうがない。可愛いのが悪いんだ。
「名前さ、ん」
「んー?」
苦しげに名前を呼ばれたので、抱きしめる力を少しだけ弱くしてほんの少しだけ離れれば、微かに潤む涙と困った表情の我愛羅に再び体当たりするようかのように抱きつけば変な声が聞こえた。…若干、砂達が動いたのは気のせいに違いない。
「ど、どうして、名前さ、んは‥」
「うん」
「助けて、くれるの‥?」
さりげなく私の腰を掴む彼に少し満足感とナルトへの罪悪感。許してナルト!だって、だって、
「私の息子にキミが似てるんだもの」
「…そ、そうなんだ、」
「あ、見た目とかじゃないよ?キミの目がね、」
「目…?」
一度、彼の綺麗な瞳をジッと見つめて、微笑む。
「孤独を知る目、愛を知らない目、愛に飢えた目」
「‥っ!」
目を見開いた彼を今度は優しく抱きしめて、手に力を込める。微かに震える小さな彼を、強く強く、抱きしめる。
「ナルトも…、息子も同じだから」
「っ‥え?」
「キミの、我愛羅の気持ち、きっと一番理解してくれるのは、私の息子だと思うの」
だから、いつかあわせてあげる。と笑顔を向ければ彼はとても嬉しそうな、心からの喜びの笑みを私に向けてくれた。
111116
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