08
赤髪の少年を抱き上げて人気の少ない所へ出れば、心地の良い風が少年の綺麗な赤毛を揺らした。
愛を喰らい尽してごらん
私の忍服をきつく掴んで離れない彼に少し笑えば、恐る恐るといったふうに顔をあげたキレイな瞳と視線が絡んだ。
「キミの名前は?」
「ぼ、ぼくを知らないの?」
初めて私と出会ったナルトと同じセリフを言うので思わず吹き出した私に、彼はまた怯えたようだった。それでも優しく頭を撫でてあげれば一瞬、砂が私を捕らえたけれどサラサラと零れ落ちていった。
「私の名前は苗字名前。木の葉の里から任務で来たの。」
「…こ、のは?」
聞き慣れない単語なのか聞き返してきた彼に、少しの疑問が浮かんだ。仮にも風影の御子息だ、他国ではあるが木の葉を知らないなんておかしな話だけれど、あの風影様を見れば致し方ないのかもしれない。
「結構近くなんだよ」
「そう、なんだ…?」
「いつか私の息子に会わせてあげる」
「ぇっ、む、むすこ…?」
結婚してるんだ、と呟いた彼にまた笑えてきてナルトとの関係を少しだけ説明してあげれば納得したようだった。
「それて、君の名前は?」
「あっ、ぼ、ぼくは…が…があら、」
消え入るように名乗った名前を聞き逃さないように、しっかりと頭に刻み込む。我愛羅…、いい名前じゃない
「我愛羅、これから君を変えてあげるよ。」
「ぼくを、変える…?」
「そう。我愛羅を変える」
言い切った私に我愛羅は困惑していたけれど、私たちを監視していた数人の気配が一斉に動いたので、素早く我愛羅を抱き上げて近くの木の上へ上がれば、私たちが立っていた所には無数のクナイが突き刺さっていた。
「…ぁ、ま、また…」
「我愛羅、大丈夫よ。君は私が守ってあげる。」
「ま、もって…、?」
「まぁ君は強いから私の助けなんかいらないかな」
少しおどけて見せれば、我愛羅は私の忍服をシワがたくさん寄るほど硬く握りしめて、大きく首を横にふって否定した。
「いや、い、いやだ…っ!僕は強くなんかないんだ!」
「君は強い。でも今は私が守る事にしようかな」
「ちがっ、ちがう…ちが、う」
「いつかは、私が背中を任せられるほど逞しくなってね。」
そう言った途端、無数の起爆札付クナイが私たちの周りを囲むように突き刺さり、背筋がひやりとしたけれど、それよりもボロボロと涙を溢す我愛羅に私は何よりも焦ってしまった。
「な、え!?当たった!?」
「ちが、う…」
幾度となく私たちを襲う攻撃を避けながらしっかりと我愛羅を抱きしめる。
「怖い!?」
「わ、わから、ない…けど、」
私の忍服を握る手とは逆の手で涙の落ちる目を擦る我愛羅を包むように抱きしめて言葉を待つ。
「ここが、なんだか…熱くて、痛くないのに…、なんだか、あついんだ。」
きっと彼には初めての感覚で、彼には難しい感情なのかもしれない。だけれど確かにソレは、プラスの感情だから、私は教えてあげたい。
…君は私が愛してあげる。
111114
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