弟なお兄ちゃんと兄貴な弟
僕の弟は僕よりもずっと兄らしい。
そのせいで昔から僕が"弟"で弟が"兄"だと間違い続けられてきた。周りに敏感だった頃はそのことがとても許せなくて何度も怒り狂い喧嘩もしたし、親にも周りにも迷惑をかけたものだ。けれどもう三十路も過ぎたころには周りの言いたいことも納得がいくし僕自身、きっと僕が弟で、弟が兄だった方がずっとしっくりくるようになっていた。
「あーアスマぁ、このクソ熱いの何とかならない?僕溶けちゃうよ」
「溶けねーし、暑いならひっつくなよ」
「えー、だってアスマにひっついてると安心すんだよねぇ…あと歩くのだるい」
「後半のが本音だろ…」
あー熱い。暑いくそあつい。砂の国でもないのに何でこんなあついのかね、ほんとやんなるわー。てゆーかアスマってばホント熊みたいだよね、アスマが歩くたびに背中にひっついてる僕に振動がすげぇのなんのって、マジのしのし歩いてるし何これまじおもしれー
アスマの肩に頭を乗せて前を見ればカカシくんとガイくんが競い合ってるのを発見して思わず顰めづらになった僕は悪くない。あの二人って何であんなにいつもいつも暑苦しいんだろ。やなモノ見ちゃったわー、なんて思ってたせいかカカシくんがこっちに気付いちゃったよサイアク
「まーた2人ってばこんな炎天下の中暑くないの?」
「やほー、カカシくんたちの方が暑苦しいよー」
「お、ナマエさんにアスマじゃないか!今日は素晴らしくいい天気だな!どうだアスマも木の葉を逆立ち20周しないか?」
「あー、オレ用事あるから遠慮する」
「ガイくんってばまじ熱いね。うちはも吃驚するぐらいの火遁出せそう」
「うん?オレは火遁は得意では…」
「あーうん違うけどそういうことでいいや」
「オレからしたらガイも大概だけど、ナマエさんも暑苦しいですよ」
「煩い」
「えぇ…」
まーそんな事はいいんだよ。誰が熱いとか火遁は熱いとか今日は暑いとか僕がそろそろ暑くて溶けそうとかそんなことはもうどうでもいいんだよほんと、
「アスマあつい…しんじゃう」
「ったく…はぁ、悪いなカカシとガイ。」
「はいはい、気をつけてネ」
うっわ、カカシくんの目が完全にわがままな子どもを見る目だった。まじしつれーなんですけどー。
よーし。カカシくんには明日特別任務に同行してもーらお。あと1人、枠余ってるんだよね〜ぴったりん〜やったね〜
ま、それは後で火影サマに伝えるとしてー。
「アスマ〜今日はもうお家でゴロゴロしよ〜」
「…ったく、子供じゃねーんだから」
呆れた顔をしても、どれだけ僕がわがままを言っても、アスマは僕の気持ちを優先してくれる。そんな弟がだあいすきだ。
「ふー。やっぱ夏はクーラーが無きゃだめだねぇ」
「おら、ナマエ汗拭かねーと風邪ひくぞ」
汗で湿っぽい服を脱ぎ捨て寝転べばアスマはタオルを持って僕の体を拭いてくれる。あー極楽じゃ〜
汗だくな僕と対象にアスマはあんまり汗をかいてないようにみえる。不思議だな〜。
「ねえねえアスマ。」
「あー?っ、て…何すんだよ…」
「へへへ〜、お昼寝しよ〜」
アスマと僕は逆転兄弟なんだって。
周りはそうやって僕たちを呼ぶけれど、僕はこれからもずーっとアスマのお兄ちゃんだから。
ね、だからアスマ。
「俺より先に死ぬなんて許さないよ」
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