ヤンデレ弟と愛が痛い姉


pipipi...

深い眠りの中、微かに無機質な音が耳をさす。鳴り響く目覚まし時計を止めようと伸ばした手は柔らかい何かに包まれた。

「ん…なあに、」

「ナマエの眠りを妨げるコレは捨ててしまおうか?ああ、でも朝だそんな事よりも俺を見て」


手をとった柔らかい何かはゆっくり私の頭を撫でたあと頬をさすり撫でた。ゆるゆると重たい瞼を持ち上げれば優しく笑う弟の姿。

おはよう、舌足らずな挨拶におかしそうに微笑みながら同じようにおはようと私の額に唇を落とす、そんな一連の流れにもう照れはない。こんな事で照れてたらからだが持たないからね。


「昨日の夜は不知火ゲンマって人と随分と話し込んでたみたいだね」

「今度やる企画を考案してたからね…んー、まだ眠たいなぁ」

「そうか…企画、な。ふふ寝癖ついてるぞ」


ぐしゃぐしゃの髪の毛を適当に整えながら体を起こせば、ベッドに腰をかけるイタチにどうしようもなく苦笑がこぼれる。今日も絶好調だよねこの子は。


「てゆーか、なんでイタチがゲンマの事知ってるの。」

「ゲンマ……ああそれなら携帯の履歴見たからだが?」

「あのねぇ……ったくあんたって子は…」


昔から私の友好関係を把握したがるイタチに何を言っても無駄だとわかってはいるものの小言の一つや二つは許して欲しい。下手すりゃプライバシーの侵害だっつーの。
規則的に光る携帯を見れば2件のメール。一つはゲンマから、企画についてまとめたデータを午後一でパソコンに送っておくとの連絡だ。有難い、本当にこいつってば仕事ができる男である。
もう一つのメールを見てみれば母親から、今日は父と二人で出掛けるから夕飯はイタチと二人で済ませて欲しいとのこと。サスケも合宿でしばらく帰ってこないみたいだし外食でもしようかな


「誰からメール?」

「お母さん。今日は帰って来ないらしいよ」

「そうか。今日は2人きりか…それでもう一通は?」

「…いや、…会社の人」


お母さんが帰ってこないって聞いた途端、イタチが少しだけ顔を緩ませたのを見逃せなかった自分が憎い。ただそんな緩んだ口元も二通目の存在にて歪んだのだけれども。


「ゲンマか。」

「えっ、あー…まあ、うんそうだね」

「今日一日は携帯触らないで。オレだけ見てくれ仕事なんて明日になればまた嫌だと言うほど見れるんだそうだろう?オレは今日しかいないかもしれない明日朝になったら何か病気になってて死んでるかもしれないし目が突然見えなくなるかもしれない。ああでも安心して姉さんが死んだり目が見えなくなっても俺がずっと一生側に隣にいるからな?ああ絶対にゲンマなんかに俺の姉さんを渡したりしない、ところで今日のご飯は何がいい?ナマエの好きなものをたくさん作ろう一緒に、並んで、家で食べようそしてご飯を食べ終わったら一緒に洗い物をしてその間にお風呂を沸かしてそうだ今日は久しぶりに一緒にお風呂に入ろう泡風呂好きだろう?」

「待って落ち着いて」


私の手を潰さんばかりに握りしめるこの手を離してほしいよわが弟よ…。ボキッ、なんて聞こえた瞬間顔を顰めた私に対してどこか嬉々とした様子のイタチ。あああ指取れるから


「ああ、握りすぎたな。すごい音が鳴った痛いか?指取るか?」

「取らねーよ」


とりあえず、弟の愛が痛いです。切実に。


140901

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