03
鼻、喉、耳、臍、尿道……そして尻穴に管が通っている。

起動時間は300時間を優に超えていた。ほかの羅列は恥ずかしくてもう認識もしたくない。
機械に犯され脳を揺さぶられる度身体が狂い、無機物と一体化したような気分になる。

全身がモップのような房状のものに隅々まで撫でられる。それは性感帯になってから触れられなくなり、膨れ痛々しく尖って存在を主張する乳首を無視し、胸の石を丹念に撫でる。繊維が掠れるたびじくじくと腹の奥が疼く。乳首が触れて欲しいと腫れ上がる。
同時に冷たい無機物に結腸を責められる。ぐりぐりと内壁が押されて入口はとっくにガバガバだった。腹の奥深くまでえぐり返されるような感覚。サーヴァントには必要ないはずの人間としての器官。全てを支配されている。固定され動けない身体、穴という穴が管と接続されている身体、恥ずべき全てを数値化された身体、オレは、本当に、人間、だったか……?



マスターの魔力。全身の管から注がれている。けれど微量。薄められている。直接腸内に放たれるほうが何百……いや何億倍も気持ちが良い。
管からの魔力は返って身体を貪欲にしていた。

無機物と溶け合う身体を引き剥がす、唯一の救い。
この身体に肉欲を教えた最高の熱。

マスターと、性行為がしたい。


目が覚めた。また失神していたのだろうか。
初めに連れられた部屋にいた。拘束はされていない。けれど目の前にいつものモニターがふたつ並んでいた。
身体が自然と期待した。期待するよう正しく調教されていた。

けれど部屋に入って来たのは複数の別の男。マスターなどではない。
男たちが身体にベタベタと触れる。恥ずかしいところを弄る。
なぜか、拘束などされていないのに身体が動かない。M字に股を開いたまま、固定されたように動かない。


自らがみているのが映像で、本当はそこに誰もいないのだと、カルナは気づいていない。そんなもの、想像の範疇にもないだろう。

「カルナくん、セックスしたいって顔してるぞ。」

「事実だ。否定のしようも無い。」

「乳首ドピンクじゃんエッロ!」

「これがか?オレには忌むべき変態の欲情した突起にしか見えないが、お前にとってはそうなのか。」

製作者の意図とは的外れでズレた会話。
それでもマスター以外との会話は久方ぶりで、カルナはどこか嬉しく思っていた。


そうやって下品な会話を続けていた折、男の勃起した男性器が尻にあてられた。
それは本当は男性器を模し湯で熱を持った無機物に過ぎない。

「あーあ、カルナくんのせいで勃っちゃった。責任とってね。」

「……それは、オレのせいなのか?」

「カルナくんのおまんこガバガバだね。淫乱なんだ。」

「それはオレのせいではない。っ、んぁ、」

どろどろガバガバになったアナルににゅるりと無機物が侵入する。
男に抱かれているようにと、ぬるいシリコンが股を覆う。ぐぽっ、ぐぽっ、とランダムな動き、人間らしい……そういったプログラム。

抱かれている。人間に。少なくともカルナは完全にそう認識していた。けれど足りない。身体はそういった。
腸内を犯す剛直。何かはわからない。けれど完全に違った。

「う、うぅ、あ、あん、ぁああ、あ、」

「オラ、オラッ、ちゃんと締めろよ!」

「う、ひぃ、しょ、しょうちした……!」

男が腰を掴みぐりぃぃいっと柔らかな尻穴を硬い剛直で限界まで掻き回す。

「い、ひぃぃぃ、まて、そんなに、したら、締まらなく、なりゅだろう!」

「もう締まってねえよ!」

男性器をいれたまま、男が両手の親指を穴にかけ、ぐにぃっと広げた。モニターにぐぱぁっとグロテスクなほど広がり、充血した穴が映っている。差し込まれているものはよく見れば合成だ。しかしカルナはそんなことには気づけない。

「んっ、んっ、あぁあ!ん、んぐっ!ゴッ……!」

顎を捕まれ視野が傾く。そして開いた喉に、別の男の陰茎が侵入する。

「おら、しっかり奉仕しろよ!」

言われた通り舌を使ってシリコンの張形に刺激を与える。大きくなる感情などないそれに、一生懸命吸い付いた。

同時に尻が苦しくなる。もう1本張形が挿入されたのだ。そして乳首がぐにぐにと押しつぶされる。
仰向けで喉を犯されて何も見えないが、感覚からして亀頭が押し付けられているのだろうとカルナは思った。

「ん、んぐ、ご、ごぼっ、おっ、オ"!」

白濁が放たれる。
正確には白濁を模した薬品だが、生臭く造られたそれはカルナには精液としか思えない。
喉に、腸に、乳首に……同時に放たれる。
全身が求めていた有機物に溶かされている。
カルナの頭はそう理解している、けれど、やはり、どうしても、乾きは消えなかった。

男たちが部屋から去った。ぐちょぐちょの全身から異臭がする。男臭い、精液の匂い。相変わらず体は動かず、拭くことすらできない。それは温かい。とても温かいのに、とても寒かった。犯された身体が気怠くて目を閉じる。なぜかいつもより頭が重くて、疲れてしまったのだ。

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