4.愛が負ける、などということは事実としても、
 真理とみとめるわけにはいかない。


次にその人を見たのは、カルデアの地下深く……なにかの実験に使われていたのだろうか、ガラスの向こう、さらに何重もの結界の先にカルナはいた。両手足に拘束具をつけられ、半ば磔のように固定されていた。
結界の内側にはカルナ以外に、なにがあろうとカルナを抑えつけることができる神性持ちのサーヴァントが3騎に、医療系のサーヴァントのみ。この部屋と関係性のあるらしいマシュ、そして、カルナが万が一惨たらしく腹を破られ消滅する様を目撃したならば、精神的なダメージを負う可能性があるマスターは不在だ。

丸々と突き出た腹は重力に逆らえず少し垂れ下がり、時節蠢いて見えた。下腹部には腹を破られないよう何らかの術がかけられているようだ。その証拠は淫紋にしかみえないが、確かにカルナの腹が押しだされるたびに瞬き、効果を発揮しているようだった。

カルナの眼はFがこの部屋に来た時からずっと、Fだけをみている。
「見えるところにいて欲しい。」カルナの要望だそうだ。言伝のみで、Fが直接聞いたわけではないが、カルナの眼はそれが本当なのだと訴えていた。
本当はすぐにでも近づいて力付けたいが、さすがに中には入れないだろう。大人しく見守っていた。

それから何時間が経過したのだろうか。カルナの腹を内側から突くように殴り続けていた生命体は、ようやく諦めるように動きを変え、邪魔をする栓も術もない括約筋のみで閉じた出口を発見し、こじ開け始めた。
花開く、というよりは蕾のがくを剥いて、抉り出された繊細な内側を、無理矢理こじ開けたときのような悲惨さで締りが開く。カルナの腹の内部で育っていた生命体の頭だろうか、どうみても異形のそれだった。母体から顔をだした子が産声をあげる。野太い芋虫のような、ミミズのような、カルナの尻穴を最大まで拡張させてやっと顔を出すほどの大きさの蟲が、ぐにぐにと血液を流しだした出口を拡張しながら、少しづつ、少しづつその姿を露わにする。
それをみて口を抑える者、嘔吐する者、目をそらす者、震えながらも目が離せなくなっている者、反応は様々だった。

そのなかで唯一、1人だけ行動した者がいた。
その者は血液が煮え滾ったように、最高に腹を立てた様子でその蟲を掴んだ。

その場に似つかわない白衣の王子、清廉な戦士、授かりの英雄……アルジュナだった。アルジュナは、尾を引かれたような感覚に白目を剥きながら失禁するカルナを、もはや怒りしか感じないその目で一瞥すると、掴んだ蟲を強引に引き抜いてゆく。

カルナの絶叫が聞こえた。もうなんの用途にも使えないほど拡張された穴から血液の混じった飛沫が飛び、酷い音と共に内容物が全貌を見せる。膨れていた腹は薄くなっていったが、栓を失うと閉じきれず、ぐぱぁっと口を開いたままになった穴はだらだらと液体を垂れ流していた。乳首は未だ膨れ上がり、あたりに乳を撒き散らしている。

しばらくすると、泡を吹くように失神した白い人は、まるで死体のように動かなくなった。

喉にこみあげたものをゴクリと飲み込む。
じわりと目尻が熱くなる。けれど零す訳にはいかなかった。
認めるのだ、そして、受け入れなければ。
どれだけ醜くなろうとも、どれだけ生理的に受け入れがたくなろうとも、間違いなく、あれはFの愛したカルナなのだ。

アルジュナは引き抜いたモノを壁に叩きつけると、一瞬にして蜂の巣になるまで撃ち抜いた。
産まれたばかりだったソレは体液を撒き散らしながら静止、絶命したようだ。
アルジュナはもういちどカルナを一瞥し、その呼吸を確認すると、いち早く霊体化し、その場を去っていった。
霊体化する直前のアルジュナの顔からは、怒りの奥に、悲哀の念を持っているようにも感じられた。


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bkm

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