2.あなたがすべての誤りにたいして扉を閉ざすならば、
真理も閉め出されることになる。
目が覚めた。心地の良いリズム。カルナの鼓動の音。夢の中でも聞いていた気がするが、もう全く覚えていない。
昨日あれだけぐしゃぐしゃにしたシーツは綺麗に整えられており、全身ベタベタだったカルナの身体は何事も無かったかのように綺麗になっている。
その胸の飾りからはなにもでてはいない。
少しだけ、残念だった。
「おはよう、F。」
声をかけられ、視線をあげる。白いその人は綺麗な眼を細め微笑んでいた。
「おはよう。」
その人が近づいてドキドキと胸が高鳴る。きめ細やかな肌と密着した。
「か、カルナさん?」
背に腕を回され、確かめるように撫でられる。その顔はうっとりとして、その仕草はまるで恋人のようだ。
「これでオレたちは晴れて恋人同士なわけだが。」
「え?」
Fの返事に撫でる手をピタリと止め、カルナは驚いた表情のまま固まった。Fもカルナの発言の意味を飲み込めず、硬直している。
沈黙を破ったのはカルナだった。
「勘違いだったのだな。すまない。忘れて欲しい。」
寂しげな背中に返す言葉も忘れ、去っていく人を見ている事しかできなかった。
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失恋したと思いこみ自分の部屋から逃げ、完全に行き場をなくしたカルナはフラフラと廊下を彷徨っていた。
脈はある、確信していた。思いきって求愛した。返答はあった。たくさん種付けされた。何度もキスをした。……恋人同士と言った時のFの顔を思い出す。全く理解していない顔だった。
開発された乳首がじくじくと疼く。けれどもう何も出てきはしない。
尻の孔がまだ開いているようだ。なにもないはずなのに、内容物がある気がしてならない。切ない。この身体はFの味を覚えてしまっていた。
「カルナさん」
「……F、なぜ追って来た。」
「言いたいことがあったからだよ。」
Fはいつもふざけたような、熱を持ったような視線でカルナを見る。けれどいま、そのFがいつになく真剣な眼差しをしていて、カルナは胸が熱くなるのを感じた。
それは間違いなく、大切な人を見る目だった。
「逃げるなんてらしくないぞ。」
「すまない、混乱していた。」
「俺も混乱した。急に恋人とか言われたらびっくりするだろ。……俺の片思いだと思ってたんだから。」
カルナが驚いている。
あれで伝わっていると思っていたのだとかこっちが驚きだ。難易度が高すぎると思う。
けれど気がつけてよかった、と微笑むと、カルナは微笑みを返してくれた。そういう気分になって、どちらからともなく唇を合わせる。
くちくちと水の音がする。Fの体温を感じる。幸福な時間だ。
……カルナはこの時間を壊したくなくて、じくりと痛みだした乳頭を、そっと抑え込んでいた。