うーん。
2014/04/01 22:09



「よぉ、芸術家」
「まだ根に持ってたんですか、それ」
中継地点である屋上で誰もがうらやむ長い脚を組んで月を背後に、にやりと笑んだ探偵は凶悪に美しい。

その美貌に、スタイルに、心に、惹きつけられて止まない。

赤く色づく薄い唇が弧を描くだけでこんなにも魅力的なものだろうか。
月の光を受けて淡く発光する様な白い肌。
宝石の様な瞳は挑戦的に此方を見つめ、ゆっくりと細められる。

「・・・っ」

猫の様な仕草で、ゆっくりと近づいてくる彼を見つめる事しか出来なくて、

彼になら捕まったっていいと思う。
一歩もない程近づいた距離にドキドキと強く心臓が脈打つ。
じっと見つめられ、指の先すら動けずにいると

「・・・!!」

すり
擦り寄せられた頬は少し冷たい。
近くによれば自分より華奢なその体を抱きしめてしまいたかった。
ゆっくりと背中にまわそうとした手に、何かがぽとりと落とされる。

「え?」

「処理、宜しくな?・・・お前の代わりに持って来たその宝石」

じゃらりと音を立てたのは宝石を飾る装丁。
ネックレスになっているその宝石は・・・


「め、めいたんてい?!!!」

さっきまでいた美術館。
ダミーばかりでどこにもない本物を探していたけれど、迫る彼との初めて逢ったあの日に合わせて諦めた・・・


「フライングですよ、名探偵」


自分にさらりと罪をなすりつけ、その美貌で惑わせて利用するなんて
彼は本当に、かの怪盗が振り回される小悪魔の様に・・・。



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