宝石とさよなら | ナノ


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今度の私は森の中で倒れていたらしく、任務帰りの班がたまたま見つけ連れてきたという。
最近この里の周辺も怪しい空気が流れだしているからとりあえず拷問にかけることになったそうだ。
ああなんかこの辺もすごく既視感が……、まさかの同じ世界なんじゃないかな。後でそれとなく聞いてみようと思う。

それでその拷問というのが、拘束されて無理矢理針を埋め込まれたことかと思ったらそうではなかったらしい。
聞きたいかという問いに私がノーと返す前に、意地の悪い笑みを浮かべて綱手という名前らしい巨乳美女が勝手に話し出した。
爪を一枚ずつ剥いだり、指を一本ずつ折ったり、何だり。と言ったところで全く何ともなっていないはずの指先が痛くなってきた気がして耳を塞いだ。
「そ、そういう時は本人の了承をとってからに……」
「覚えてないみたいだが一回起きたときにちゃんと自白剤にするかと聞いたぞ?」
注射は嫌だァなんて断ったからそっちにしたまでだとあけらかんとして見せる。
「ただの一般人だってことはチャクラがないから薄々気づいていたけど、いやぁ悪かったよ」なんて天に顔を向け笑う綱手様はもう爽快すぎて突っ込むに突っ込めなくなる。
はぁ、と綱手様の後ろでサクラちゃんがため息をついた。苦労してるんですね……。

「しかしお前、ナマエだったか?忍には向いてないな」
ガタンとベッドの横の椅子に腰かけた綱手様は、拷問する前からべらべら話していたぞと肩をすくめる。
同じこと昔言われた事があります、苦笑いをすればそれも聞いたとサクラちゃんと顔を見合わせた。
どうやら彼女もその場にいたらしい。恥ずかしいこと口走ってなければいいんだが……。
ブツブツと気まずい顔をして呟く私に、ああそうだ、そろそろお前に客が来るはずだなんて綱手様がちらりと時計を見、頭部を掻く。

「まあ……、服を返しとくぞ。早めに着ておけ」
サイドの棚に乗った服をサクラちゃんがベッドまで運んでくれた。
病室の中に女しかいないことに初めて気づき、目線を落としシーツを手繰り寄せたと同時にドアが綱手様が入ってきたときよりさらに大きな音をたてた。


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