宝石とさよなら | ナノ


▼ 79



どうやら寝てしまったらしい。外が暗くなり始めたのでカーテンを閉めた。
洗濯ものを取り込むお手伝いを忘れてしまった為謝ろうとサンダルを履きドアノブに手を掛けた。

なんだか胸がざわつく。
ボクは部屋の隅に放置されていた瓢箪を久々に背負った。
しばらく手で持つこともなかったからか、ひどく重く感じる。
逸る足がもつれないように注意しつつ、ナマエが晩御飯を作りに取り掛かっているであろうキッチンへと向かった。

「ナマエ!」
音をたて開け放たれたドアの先は暗かった。電気がついていないのだ。泡立つ肌が敏感に空気を感じ取っている。
テーブルの上にメモもない。鍋の火は止まっているが、まな板の上にはまだ鍋に入れる予定だったらしい野菜が中途半端に切られている。
ボクが手伝いをしなかったから疲れて途中でナマエも部屋で眠ってしまったのだろうかと元来た道へ踵を返した時だった。
ズンと地鳴りのような音が外から響いてきた。パラリと天井から零れてきた砂埃を乗せたまま、方向転換をし玄関へ急いだ。

「……っ、ナマエ!」

我愛羅は息をのんだ。とまりたくないのに脚は動かなかった。ナマエが倒れている、砂がはっきりと赤く染まっている。
「お願い、動いて!」焦りチャクラを練れない我愛羅をあざ笑うかのように動くことのできない自身の足を殴る。
自分にはこれと言って危害を加えられてないから砂も自動で防ぐことも無い。
暴走しないようにコントロールする生活をしてきた我愛羅はストッパーの外し方を綺麗に忘れてしまったのだ。
クナイの刺さったナマエの身体からどくどくと流れていく血液にひっひぐ…と喉をしゃくりあげる。
ナマエの身体全体にかかった陰に視界がぼやけていく。大岩が何者かに持ち上げられているのだ。このままじゃナマエが下敷きになって死んでしまう。
足首に巻き付いていたチャクラの練り上げられている糸に気付いた。しゃがみそれをどうにか噛みきり、ナマエのガードを出来るように瓢箪から砂を出し走り近づく。


「どうして、どうしてこんなことをするの!誰がっ……!」
「我愛羅、とまれ」

げぼりと口から血を吐き出しながら、ナマエが名前を呼んだ。いつもの呼び方でもなく、優しい声でもない。威圧するような音だった。
せっかく動き出した足はナマエの威嚇にびりびりと筋を震わせとまる。

「自棄にならないで。私は我愛羅に生きてほしい」
約束は守りなさい、愛してたよ我愛羅。
急降下した大岩がべチャリと生々しい水音を衝撃と共に運んできた。

対角線上で、揺れた顔布が捲り上がった。



「キンコウ、ヤリスマル……」
冗談だよね、吃驚させたかったんでしょう?
引き攣る口をどうにか動かす我愛羅を二人が笑った。


「そんなわけないだろ、俺はお前が嫌いだし」


母がまた死んでしまった、また自分のせいで死んでしまったのだ。
ナマエが見てないのに守る約束なんてない。
もうどうでもよかった。

舞いあがった砂の感覚が久々すぎて、腹の中で守鶴が笑った。


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