宝石とさよなら | ナノ


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「そうか」
頷いたきり押し黙ってしまったチクマにナマエはもう一度肯定する。
何度言われようと、もう意見は変えないと、そう語るナマエの茶色の瞳に「それじゃ帰れなかった時は正式な忍になろう」と微笑み勧誘した。

「いつまでも特例ってわけにはいかない。きっと我愛羅は一般人のままにしたいというだろうが、それだとナマエがどこまでも質素な生活をして切りつめようともいずれ限度へぶち当たる」
人手が足りない現在では私らがナマエの監視をするという条件で情報部隊に所属できているが本来管制塔に一般人は入れない。
前からそこに仮所属していることへの疑問視があったがそれに答えてはいさよならって放り出すのはあまりにもかわいそうだ。なにせ今まで作ってきた居場所がなくなるんだからね。
我愛羅が砂を裏切らない限り、私の下イコール我愛羅の下だ。
砂の月の桂は砂隠れを裏切らない。帰ってくるところはここ、私の元。あんたのビーコンになってあげるよ。

にこりといつもの揶揄い時の意地の悪い笑みでも呆れた時のから笑いでもなく、安心させる為だけに描かれた弧をぽかんと間抜けな顔をして見つめていたナマエだったが、数秒の間をあけお茶を持つ手元へ目線を落とした。
「その、……いいの?」
「仮にも里のほぼすべての情報を担う部署の長だよ?わざとじゃなければうっかり口を滑らせるわけがないでしょ?」
「……禁術を施したから帰れない可能性が高いってやつは」
「へっへっへ、うっかりうっかり」
わざとらしくこつんと頭を叩くふりをして見せる彼女に殴る振りで返しながらもナマエの顔は嬉しそうに破顔していた。


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