宝石とさよなら | ナノ


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昨晩帰ってきたのは日を跨いだころだったが年中睡眠不足の我愛羅君は慣れなのか呼び出しが早朝であれすぐに覚醒する。まあ最近は起こしてもらうのが楽しいのか狸寝入りをすることが多いが覚醒自体は早い。
職場が同じ建物であれ部署が違えば先に出社することもあるわけで。
今日早出なのを知らなかった私はすっかり寝坊してしまっていたのである。
食卓に簡素な朝ごはんが置かれていたことでさらに募る罪悪感に後頭部をガシガシかいてしまった。

揚げ物以外は……と躊躇する彼だが出来ないわけではないらしい。得意とする揚げ物よりはレパートリーが少ないだけで。
幼少期に私がこの地域での生ものは危ないから基本は火を通しなさいと再三言ったことを守っていたのだろう。
油を怖がるカンクロウ君の代わりに砂の鎧を身につけている我愛羅君が菜箸を弄っていたからか、兄弟はそれぞれ自身がついた方向を極めて行ったようだ。
まあ何が言いたいかって言うとこの歳になると朝から揚げ物はちょっとつらいってことと目玉焼きの油多かったなってことなんだけど。
中華料理店で出されたか錯覚するような目玉焼きをもごもごと口にし、そういえば今日はチクマちゃんが一日いない為いつもとっている弁当屋に頼んでいないことをふと思い出した。

中忍試験中は何かと忙しかったし職業柄商談などに使える受けの良い店と言うものも作っておかなければならなかったから特に最近は外食ばかりだった。
……ヤマトさんとこに居候させてもらっていた時以来だな。あの時は外食は油っ毛が多くて困るとヤマトさんが愚痴をこぼしていたのを聞いたから作ってみたが思いのほか喜んでくれたしきっと我愛羅君も同じように笑ってくれるだろう。
彼には作ってあげたことはあっただろうかと記憶を探るも目まぐるしく過ぎ去って行った日常をある程度思い出したところでめんどくさくなり想起するのを止める。
私は遅出でまだ時間に余裕はあるし、我愛羅君と昼一緒に食べる約束をしたし好都合だ。
そうして久しく作ってなかった弁当へ、本当に気まぐれに手を出したのだった。


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