宝石とさよなら | ナノ


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チヨ様この人に一体どんな教育したんですか……。
ナマエは偶に飛んでくるクナイを避けながら葬式まで終えた師匠への文句を念波で飛ばしていた。
監視の命を下され、元犯罪者が里へと放たれないように封印されている工房の一室へと毎日しぶしぶながらも足を運び様子を見に行ってるわけなのだが生傷が絶えないのは困る。
血だって出るから数時間監視後に通常の業務に戻った時紙を汚しかけたこともあるし、帰る途中にワイヤーで首を切られかけていたらしく執務室に入った瞬間マタンさんのところに連れていかれたこともある。
祖母の弟子だからと言う理由で本気ではこちらに攻撃してこないようじゃのォとかエビゾウ様は言うけど、ストレス解消用に差し出されている様な状態の自分にとってはたまったもんじゃない。
我愛羅君の時は相手が小さかったのもあるし口をぎゅっと結んでて我慢しているのが見て取れたから某風の国の王女の気分でいられたが、このサソリとかいうおっさんは見た目は子供だろうが精神面は腐っても大人なので油断なんてできたもんじゃない。
今もまたエビゾウ様が本気じゃないと判断したチャクラ糸無しのクナイが頬を掠めた。身体がまだ出来上がらずうまく自分の入れ物を作成できなくて苛ついているらしいが知るかンな事。

「座敷牢かここは」
「普通に戻って来ていたならエビゾウ様だって封印班呼んだりしませんでしたよ」
自業自得だと、我愛羅君に手をかけたんだからそれくらい甘受しろと赤の一線が入った頬を拭いながら睨み付ける。
チヨ様だって自分にあれだけ哀憫の目で語っていたのだし、工房だって現役から去りあまり使う事がなくなってからも綺麗に保管していたところから戻ってくるのをずっとずっと待っていたのだとナマエは目を細めて視線に乗せた。
口にしないのはこの男に何を言おうが「くだらねえ」の五文字で師匠の気持ちを足蹴にするのがわかっているからだ。死者の願いをわざわざ無下にし散らす奴にかける言葉なんてない。どうせなら自分で師匠の思いを感じとって欲しいし。

咋な溜息をつき、大人しく自分の入れ物を制作する作業に戻って行ったサソリの小さな背中を眺めながら入口で暇つぶし用に持ってきていた今回の資料と過去の中忍試験の資料に目を通す。試験まで残り3日を切っているため、のんびりとしていられないのだ。
我愛羅君の事は間に合って良かったが、奪還作戦で離れてた分流れもわからないし時間を無駄にしていられない。
受付はマジュちゃんとは別々になってしまっているのにチクマちゃん直属の部下だからという理由で、指揮官を押し付…任されている為いつも以上に気を入れて取り組まなければいけない。
そうだ、試験が終わったらオイラクさんのところでカンクロウ君と飲み会でもさせてもらおう……。この前結局潰れちゃったし奢ろうじゃないとご褒美の予定を膨らませていれば目の前に小さな膝が見え反射的に資料ファイルを投げ出し飛び跳ねた。
「監視役がぼけっとしてんじゃねえよ、これ次のリストな」
「監視役なの理解してるのに普通に話しかけて来るのむかつく……って、まだ材料全部購入終わってなかったの?!」
「テメェが一人になった途端素を晒してたくせにほざいてんじゃねえし、あの程度で仕込み分まで買えると思ってんじゃねえよ」
まあもう外側は終わってるからこの後移植するけど仕込み無えんじゃ決まらねえだろと呆れたとばかりに首を振る小さな人形にピキリと青筋を立て、だれのせいでと文句を口にしてやろうとしたところで久々に聞いた自分を呼ぶあの声色にビクリと背を跳ねさせた。

「……ナマエ、その子供は誰だ」
一瞬の間の後、怒気を孕んだ我愛羅君が投げてきた質問にブリキのように音を軋ませて振り向いたのだった。


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