宝石とさよなら | ナノ


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「中忍試験に推薦したい部下がいる……そうだな、新人担当の者は前へ」
隣にいたシュデンが我愛羅に志願書の束を差し出すと、我愛羅の声に手をあげた上忍たちがちらほらと並びだした。
風影を前にする上忍を挟むような向きで両端に添えられた机の端に陣取ったマジュがナマエを呼び座らせた。
受け取るのは私達だから担当の彼らの顔を覚えておいて損はないよと耳打ちするマジュにふむふむと頷き、角度的にほぼ横顔しか拝めない彼らの顔に視線を這わせる。
……と言っても暑い砂漠なお国柄、木の葉より頭部を覆う布面積が多く半分ほどは見分けがつかなかった為に、用意してもらった手元の上忍の顔写真と見比べなんとか判別を付けようと目を凝らす。
声を出してはいないものの眉間にしわを寄せ眉を八の字にしたナマエを見て、こっそりと我愛羅の後ろから移動して来ていたカンクロウが空いていた隣の席に腰を下ろした。
「ナマエ、お前それで覚えられんのかよ」
「う、うるさいなぁ…!出来る出来ないじゃなくてやらなくちゃいけないんだもん」
ちょっかいをかけるカンクロウに頬を膨らませ、さらに写真と彼らとを何度も目を往復させるナマエに吹き出すと、まあ頑張れと他人行儀な励ましを投げた。

「僕のところはマツリとイッテツ、それとヤックを推します」
「こちらはサリを」
そう言って幾人かの上忍が自分の部下の名を列挙していく。暗黙の了解なのか、誰一人として異議を唱えることはない。
隣で「今回は自国がホームだからやっぱ多いなぁ」とニヤつくカンクロウ君を後目にナマエはがりがりと口にされた名前を書き連ねていく。
ただのメモ書きではあるが、上忍たちの写真のすぐ下へとメモしているためまだ顔と名前が一致していない私にとっては多少は役に立つ…と思いたい。
そんなことを願いつつ、昨年度卒業の新人選抜へと流れていく志願書配布会を見守った。


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