宝石とさよなら | ナノ


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何のためにここまで頑張ってきたかと言えばナマエの為だった。
力を欲したりナマエをこちらの都合のみで口寄せしようと我欲に走った時もあったがその必要はなくなった。
万が一の為に時空間忍術を使用できないように制約をかけたため世界線を越え戻ることもほぼ不可能だろう。
風影になり、こっそりと禁術の集められた書庫に通っていたのが吉と出たのだ。
チヨバア様を主体とした傀儡部隊の一部が編み出していた命を吹き込む術を死体と言う名のヒトガタに施した訳だった。
何故かは知らないがナマエ自体は岩に潰されずに生存していたらしく、こちらの世界へ魂だけが分離して戻ってきたナマエを掴まえて入れただけなのでリスクだった術者の命と引き換えという問題点もない。
そう、幸運に幸運が重なったようなナマエとずっと一緒に居るためである。
なのに今この状態はどうだ、共に時を過ごしたくて彼女の住みやすいように整えているはずなのに肝心の“一緒に居たい”の部分がないがしろにされているのではないだろうか。
それにナマエは人を無意識に誑し込む力を持っている、自動で発動するそれは知らない間にどんどんとナマエの周りに人の繋がりを作っていた。
オレだけでいいのに。そう思いながらも楽しそうに他人と話すナマエを止めることは出来なかった。
だから見張っておかないといけないのに……。

「ナマエ、こんなところにいたのか」
「おお我愛羅君仕事終わったの、お帰り」
夕飯の材料買っていたんだけど何かリクエストあるかと迎えざまにそう返してきたナマエに店舗にいた人間がざわついた。
幼少のころもまた違う意味で有名だったが影となった今はそれとは半分くらいは逆の意味で有名になった。
周りに人がいてくれるのは嬉しいのだが、幾人かの人間がナマエに視線を送っていたのをオレは横目で確認し、そうだな…と一息ついた後見せつけるように「ナマエの作った料理なら何でもいい」と答えた。
それが一番困ると再び唸りだしたナマエの手荷物を奪い、オレは少しだけ牽制するように視線を送ると隣に並んだのだった。


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