宝石とさよなら | ナノ


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役所のような風影邸…と言っても離れはもっと先で、本来の風影邸も別棟でありここはただの執務室だけども、それが存在する為か里はこの周りを囲う様に賑わっている。
自分がいた世界とはやはり違うと感じてしまうのは今歩いているこの円柱状の建物が多いせいだろう。
岩をくりぬいたのか砂で塗り固めたのかはわからないがとにかく軒並みこの形状で、そういえば木の葉も円物が多かったと思いだした。
流行りなのだろうか、円状ってどうなんだろう。会議の時は良いかもしれないけどあまり家具が置けそうにないんだが…、ベッドとか。
「ねーちゃん、忍者かい?」
風影邸から出てきたけど、と話しかけてきた男の人に一瞬いえ違いますと返事をしそうになったものの、これから同じ立場に並ぼうとしているしと「まあ、見習い?ですかね?」と返事をしておいた。
理解できなかったもののふぅんで終わるわけがなく、ならうちの武器を買ってけとばかりに店に案内されていった。

「この武器さ、新作なんだけどどう思う?」
「いやどう思うって言われても……」
嘘やん、正直に言っておくべきだった。勘違いされ武器の批評を頼まれた私は冷や汗ダラダラだった。
今更そうとは言いづらいし困る。だけど適当なこと言って逃げるのもそれはそれで可哀想で……。困ったぞ…どうすればいいんだこれ。
切り抜けられそうに無かった為とにかくその暗器をくるくると回し見る。これ私の手じゃ握りにくいな…太くて……。
ただ忍じゃなくて私の手の筋肉が無いだけかもしれないしと迷っていれば、背中側から重しを乗せられたように肩が沈み、ついでに頭も沈んだ。
「女物なのにこんなに握り手が太くてどうすんだ?」
「て、テマリ様!」
っべーナイスありがとう神様仏様テマリ様!目を丸くしていれば任せなとばかりに綺麗な顔でウインクを投げてきた。すげえ…惚れそう。
たまに見舞いには来てくれたけどやはり忙しいからあまり会う事の出来ない彼女に膝をつき、多分この世界では存在しない神様と同格に持ち上げ感謝をした。

武器商人の男性にテマリちゃんがまあ及第点かなと顎を擦りまとめると、私の肩を抱き店から出る。
「ナマエお前どうして武器屋にいたの?」
「な、なんででしょうね…成り行き?」
テマリちゃんに首を傾げられたものの私だってわからん。とにかく助かったと顔の前で手を合わせていてふと彼女が大荷物なことに気付いた私は顔をあげた。
「何処かに行くの?」
「ん?ああ木の葉に会議と研修を受けにな」
もうすぐ中忍試験だろ?一つはそれに関する打ち合わせでもう一つは前線に出たくなくて教師を選ぶ奴らの為に木の葉の教育方法を奪う。
奪うって……。言葉が適切でないような気がして突っ込めば政治や軍事なんてそんなもんだろと軽快に笑った。
新しい風を吹き込まないとシステムが腐るからな、木の葉は主に現火影考案の医療忍術や技術などで、こっちは攻撃特化をウリにしている。
同盟国同士の、まあ互いに情報交換だと補足したテマリちゃんに納得した私は気を付けていってらっしゃいと笑みを返し見送った。


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