例えるなら白い徒花(使用不可) | ナノ


▼ 飾り立てた暴言


「おまえが死ねばよかったんだ!!」


シ=オンが渾身の力を込めて放った暴言にも、モミジはなにも言わずに受け止めた。青白い顔をシ=オンの前に差し出して、身動ぎもせずただ床をじっと見つめている。


「知ってたくせに、なんで、どうしてラズロとキャーが……!」
「シ=オン! やめなさい、彼女だってつらいのよ!」
「なにがつらいんだよ! どうして、なんでいつもオレばっかり……やっと手に入れられたと思ったんだ、それなのになくした、どうしてだよ。サージャリムが本当にいるなら、どうしていっつもオレから奪っていくんだよ!!!」


声を枯らすほど泣き叫んで、普段ならば弱味など頑として他人に見せようとしないシ=オンが膝から崩れ落ちる。それほど、ラズロとキャーの喪失はシ=オンの小さな身体をめちゃくちゃに引き裂いた。たったの78日間。たったの78日間しか、シ=オンはラズロたちと暮らすことが出来なかった。家族になろうと初めて言ってくれた人だったのに。

それなのに、また、おいていかれた。

リアンによって孤児院に連れ戻され、出迎えたモミジの顔を見るまでシ=オンは彼女の存在などどこか彼方に置き忘れていた。けれども彼女の白くうつくしい顔を見た途端、二人のリアンたちの会話を思い出さずにはいられなかったのだ。


「知っていたくせに」


一言吐いてしまえば、あとは簡単にモミジを責めることが出来た。いま思えば、わかるのだ。彼女の微笑みの意味が、あんな風にシ=オンに接していた理由が。

シ=オンは見抜けなかった自分が悔しく、ひどく腹立たしくさえあった。モミジを好きだった分、激しく憎まずにはいられなかった。嘲りと怒りのあまり笑いが飛び出してきて、リアンたちに引きずられながらシ=オンは懸命に叫んだ。


「人殺し!」


この日以降、シ=オンとモミジの二人の道は決定的に別たれることになる。




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