※顔文字表現が多数ございます。





今やヴァンガードをする者が数億人を超え、世界全てがヴァンガードの熱気に包まれかねない今日この頃。
今日も熱狂的ヴァンガード試合はやっていた。
今回は大掛かりな試合。それも、全国予選で勝ち抜いた者達ばかりが集まるという最も盛り上がる試合である。
今そこに、櫂トシキはゲストとして参加していた。
既に単独でもチームでも全国制覇を果たし、ヴァンガード界で一役買っていた櫂。そこで、この試合で優勝した者が、櫂と戦えるというシステムを作り、櫂をこの試合に招いたのである。
主催者により特別に用意された特等席より、櫂はその試合を眺める。そこから見えるのは確かに強い者達ばかりなようだったが、どうにも櫂の心を震わす者はいなく、少々退屈していた。

「退屈しているんですか?」

傍らにいた少年が、櫂に声を掛ける。その声に、櫂は鬱陶しげにその声の主に顔を向けた。

「お前が誘ったんだろう?俺は大会に出場したかったんだ。それなのになぜこんな退屈な…」

溜息をつきながら、くどくどとその少年に愚痴でも零すように告げていく。
正直なところ、櫂はこの大会にゲストではなくきちんとした参加者で出場する予定だったのだ。しかし申し込みしようとしたのはよかったが、この少年__レンに止められてしまったのだ。今から思えば、釣られた。
『より強い者と戦いたくありませんか?』
そんなキャッチフレーズについ心惹かれてしまったのだ。
もともと強い者達と戦いたくてこの試合に参加していた櫂だ。より強いと言われてしまえば、願ったり叶ったりだった。しかし、予定が違った。

「優勝した奴一人と戦えないとはどういうことだ」
「えー。だって『より強い』って言っただけで、何人も戦えるとは言ってないじゃないですか」

レンは唇を尖らせる。その顔に思わず殴りたくなった櫂は、震える拳を抑えながら言った。

「殴っていいか」
「今まさに殴ろうとしながら言わないでください。怖いです」

レンの言葉に、櫂は舌打ちしながら胸元まで来ていたその拳を収めた。
その様子に、レンはふぅ、と安心したような溜息を漏らす。

「イイじゃないですか。この中でより強い人と戦えるんですよ?」
「その人数が一人となれば、出場していた方がより経験が集まると思うがな」
「…ぅ」
「ここだと暇だ」
「…ぅぅ」
「出場させろ」
「言うと思ってましたけど無理ですよわかってください!!!」

レンの必死な叫びを横目に、櫂は再び会場に目を向ける。
先程まで見ていた試合は、レンと喋っていた間に前進したようだった。
ネオネクタールとアクアフォースの闘いだが、今のところはアクアフォース側が有利だ。ダメージゾーンとしては、5対4。だが、ここからが正念場だ。
今はグループ戦。次はシングルとあるので、今日は長い。しかも誰かが優勝するまで櫂は出番無し。その事実に、櫂の苛立ちは膨らむばかりだ。

(あ、リミットブレイクでもう逆転だな)

映るモニターにて、ネオネクタールの少年がリミットブレイクを宣言していた。
ヴァンガードのパワーが14000。そこから、リアガードは13000になるなどパワーが凄まじい。少年はリアガードで、インターセプト可能なモンスター達を消していく。アクアフォース使いの少年はガードしないままだ。遂に自分のヴァンガードで、アクアフォース使いのヴァンガードを攻撃しようとしたその時、

『翠玉の盾 パスカトリスで完全カード』

少年の冷静な声に、ネオネクタール使いの少年は悔しそうな顔をする。
トリガーもなく、ターンエンドを宣言し、アクアフォース使いの少年のスタンド&ドローフェイスとなった。
櫂としては、あそこでトリガーを引いておけばまだ望みはあったかもしれないと思っていたが、だが所詮は望み。アクアフォース使いの少年は見事アルティメットブレイクを果たし、ネオネクタール使いの少年は為す術なく試合を終えた。

「あのアクアフォースの人、かっこいいですね」
「そうだな。あそこでクリティカルを引き当てるとは、なかなかのやつだと思う」
「おや?櫂が褒めるなんて」
「俺が褒めたらいけないのか?」
「いやいや、別にそんなことは」

わざとらしい無邪気な微笑みに、櫂があざといと思ったのはここだけの話である。
櫂は終わった試合の次に映し出される別試合が始まったのを見、頬杖をつく。
これから試合はまだまだ長くなる。退屈な時が続きそうだ。
ふとレンを見れば、見飽きてきたのかふらふらと室内を歩き回っていた。今はアサカやレンがいない為に、櫂以外話し相手がいない。しかも、もう既に櫂との会話も終了してしまっている。だからこそ、退屈なのだろう。

「アーちゃん、早く帰ってこないですかね?」
「お前が行かせたんだろう」

レンの駄々に、櫂は溜息をつく。
アサカは今、レンが「あのお菓子食べたい」のようなことを言ったばかりに、自ら買いに行ってしまったのだ。ちなみにテツはその付き添いでいない。

「あ、そうです!」

レンが何か思い出したように言った。

「これから、『幻のカード』を持っている人が出るらしいんです!」
「幻?」

その言葉に、櫂は反応する。
幻のカードといえば、『ブラスター・ブレード』などが挙げられるが、他に何かあるというのだろうか。

「そうか」

ひとまず考え、櫂は簡素的な答えを返す。それに対し、レンはきょとんとした顔をした。

「興味ないんですか?」
「聞いたことなからな。それは、かげろうか?それとも、なるかみか?」
「さぁ、僕にもわからないですよ。だから気になるんじゃないですかー。___あ、この人ですよ!!」

レンがモニターに向かい指を指す。それに釣られ、櫂もモニターへと視線を動かした。
特に何も知らない、顔すら知らない少年がそこにはいた。顔的に勝気っぽい。けれど性格的に、どうやら普通の好少年らしい。
なんだ、と期待はずれにそのモニターを見ていると、少年は自身有りげに笑うのが見えた。

『行け!俺の分身!!ライド、ブラスター・ブレード!!』

おぉ、と歓声が上がる。そのとき櫂は、やはりブラスター・ブレードだったか、となるかみやかげろうじゃなかったことに少し落胆し、若干興味が薄れていくのを感じた。
一方のレンは、そこまでではないが少し目を輝かせている。
そのときだった。

『後列に、「あいち」をコール!』

ガタッ!!!

椅子が思い切り音を立てる。それは櫂の立ち上がった音だ。

「…どこへ行く、レン」

レンが動く気配があり、櫂は振り向く。レンはいかにも急いでる感を醸し出し、櫂を鬱陶しげに見た。

「なんですか櫂。僕は急いでいるんです」
「どこへ行くんだと聞いている」
「あの少年を買収しに行くんですよ」

では、と自動に開いたその大きなドアを勢いよく潜っていく。
レンの思惑を悟り、櫂はその後を追いかけた。












「『あいち』のブースト、アルフレッド(ヴァンガード)でお前のヴァンガードにアタック!!」
「め、『冥界のパペットマスター』二枚、それから『プリズナー・ビースト』でガード!!」
「ドライブトリガーチェック!一枚目……二枚目、ゲット!!クリティカルトリガー!!効果は全てアルフレッドに!行け!!アルフレッド!!」
『おぉっと!!!アルフレッドの攻撃がヒットぉおおおお!!勝者、Aブロック!』

そうMCが早口に会場内の大量の客の歓声が、うるさいほどに響く。
するとそれを遮るように、真っ赤な髪を靡かせた少年が入場用室内から歩んできた。

「今日のゲストの一人、雀ヶ森レン…?!」

ざわざわと観客が騒ぎ始め、先程勝利した少年も思わず振り向く。
そこには、ドヤ顔で観客に手を振りながらこちらに近付くレンの姿があった。

「今回は勝利おめでとうございます」
「は、はぁ」
「時に少年、君、FFに入りませんか?」
「…へ?」

再びざわざわと騒がれるも、レンのそのきらきらした瞳は変わらない。

「ちょっと気になることがあるので、FFに入ってください」
「気になること?」
「そうなんです。君の持っているそのカード」

レンは少年の手に持っているカード達から、とある一枚を抜き出す。
それに少年は嬉しそうな、誇らしげな反応を示した。

「それ、立凪さんにいただいたんですよ!すっごいですよね〜」
「たつなぎって誰ですか?」
「え?知らないんですか?今回の大会の主催者である人ですよ?」
「そうなんですか、でも興味ないです。にしてもこの『あいち』くん可愛いですよね。僕のデッキには、女性キャラは少なかったので、いいですねぇ」
「『あいち』は男ですって」
「そんなことはどうでもいいんですよ」

なんでだよ!!一体何しに来たんだあんた!!
そう少年が言いたいのが、ひしひしと伝わってくる会場の皆様。

ホントにこの人、何しに来たんだ。

そんな思いを込めながら、司会者はレンにいそいそと近付いた。

「あの、レンさん?まだ登場には早すぎるかと…」
「え?あぁ、そうですか。そんなことよりも少年、このカードを売ってくだされば、今ならもれなくFF幹部に永久就職とか付きますよ?」
「へ?」
「話が読めていないんですか?仕方ない。そこのところで、いくらで譲るかの取引と行きましょう」
「え、ちょっ」

少年がレンに連れて行かれそうになったその瞬間、少年のもう片方の腕を一人の青年が掴んだ。
少年は思わず振り向き、唖然とする。
そこにいたのは、あの孤高のファイター櫂トシキ!

「あの彼の歩いたところにペンペン草も生えないと噂のあの伝説のファイター櫂トシキが今ここにいるなんて!!」
「お前、頭大丈夫か」
「櫂、そんな痛くて長い略して痛長な詠唱ニックネームを広めていたんですか(ドン引き)」
「広めるかボケ」

正直今起こっていることは分からない。だがしかし、会場の皆様方にも分かることがある。

会場の皆様(絶対、面倒なことが起きる気がする)

「何するんですか、櫂。僕はこれからこの少年を買収するんですよ」
「おいお前」
「スルーしないでください」

レンの警戒をモノともせずシカトを決めた櫂は、少年に話しかけた。

「『あいち』を俺に譲れ」
「は、はい?」
「譲れ」
「い、いやいやいや!!櫂さんと『あいち』じゃクランが…」
「そーですよ。だから消えてください櫂」
「残念だが、デッキに入れるつもりなどない」

その言葉に、二人も会場の者達も「?」の疑問符を浮かべる。
そんな者達になど気にすることもなく、櫂はふっと笑った。

「鑑賞用兼癒やし用として貰うに決まっているだろう」
「もはやカードじゃないですよねそれ」
「何を言っている。レン。このカードは使うんじゃなくて眺めているのが最も正しい使い方だということを知らないのか」
「ヴァンガードって、そんなゲームですっけ?レンさん」
「櫂、それ僕が言おうとしていたんですよ」
「(振る相手間違えた気がする)」

少年は悟る。
こいつら、俺じゃなくこのカードにしか興味がないのだと。

「なんでそんなにこのカードが欲しいんですか!!」
「見た瞬間運命だと感じたから((どやぁ」
「可愛いからに決まっているじゃないですか((どry」

もうやだコイツら。
少年の心と会場の皆様の心は一つである。
もはやみんなは置いてきぼりなこの雰囲気。
先程までは別室に退屈を持て余していた彼ら。しかしなぜ唐突に出てきたのか、今の発言に明らかになったようだ。

つまりは、このカード(あいち)が可愛いから欲しいだけなのか!!

「ちっ。これじゃあ拉致があかない。レン、ファイトしろ。勝ったら『あいち』は俺が貰い受ける」
「いいですとも。やってやろうじゃないですか」
「俺に拒否権はないんですか!」

二人はどうしてもカードが欲しいらしい。ジト目で少年を見ている。

「だから、譲ってくれたらFF本部の幹部に永久就職させてあげるって言ったじゃないですか」
「じゃあ俺はファイトしてやろう」

MC(今日のメインイベントが終わりそうだ)

MCの心など一切お構いなしに、二人は話を進めていく。

「少年、どっちにカード譲ってくれるんですか。トレードでもいいですよ」
「俺も構わん」

じりじりと少年に詰め寄る。
少年はもう自暴自棄にでもなったのだろうか、二人から逃げるように走り出した。

「逃げましたよあの人!」
「面倒だな」

こういうときに限ってどうやら団結するようで、二人は少年を追いかけるようにその場から去っていった。

こいつらマジで何しに来たんだ。
未だ状況の掴めない会場の皆様の心は、今日のみ一つになったのである。
この後の試合としては、進みはしたがいつの間にか消えていたゲスト達によってメインイベントだけ実行されなかった。


果たして二人のどっちが『あいち』を手に入れたのか。
それとも少年が死守したのか。
結果は誰にも分かることはなかった。






__その頃のユニット達といえば

あいち「どうしたんでしょうか、マイヴァンガード」
アカネ「さぁ…。なんだか大変そうね」
ギャラ「……」
BB「どうしたらいいアルフ。あいちが狙われている気がしてたまらんのだが<●><●>」
アルフ「お前には超能力でも身についているのか」
うぃん「わぅ!!」
あいち「うぃんがる!アカネ、これ気にしたら負けだと思うんだ」
アカネ「そうね、気にしたら多分負けね。…ちょっとギャラティン、BBの開眼が収まってないんだけど、ツッコミ役宜しく。行こうあいち」
あいち「ん?あ、うん。行こう、うぃんがる!」
ギャラ「(…沈黙設定なのに、止めろとか無茶ぶりすぎるぞアカネ)」

BB「あいちと離れちゃう気がする」
アルフ「頼むからしっかりしろBB」


地球とは違い、惑星クレイでのあいちの周りは、どうやらいつもと同じような日常を送っているようである。









○あとがき○
本当にごめんなさい。やらかしました、愛茅様。
中途半端なギャグもどきです。ギャグのつもり!そう言い張っていたい!!
お題を頂いてから、ずっとシナリオを練っていたのですが、内容がどうにもギャグにしかなっていないようで、「これは私にできるものなのか!?」とか思ってしまいました。しかしリクエストしていただいたからには頑張ろうとしましたが…。
その結果がこれだよ!!!(←)
ちなみに「あいち」がなぜ平仮名かと言うと、「うぃんがる」や「ふろうがる」などに習いました。最初は格好良く「蒼き先導者 アイチ」でもいいかなぁとか思いましたが、愛らしく平仮名にしてみました。けれど、「コール」ということで、BBをただブーストしてあげたかっただけです(笑)
こんな駄文になってしまったことをお詫びいたします<(_ _)> 
もしもこのような駄文で喜んでいただけたならば、私としてはもうこれ以上の幸福はありません゚(゚´Д`゚)゚

それでは、リクエストしてくださり、誠にありがとうございました!!








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