ただ、そこには悲しいほどに、真っ赤な血が広がっている。
そこは荒野。もともと、街中であったはずなのに。
たった一人の妹を、世知愛(せちあ)を救って上げられなかったの。
遊戯(ゲーム)はもう幕降りようとしている。神様が主催した、この遊戯に私は勝てなかった。
この私、倉木聡美(くらきさとみ)は。
妹を救うことさえも叶わなかった。
醜い醜い争い。私は怖くて逃げ出した。

(僕はね、聡美さん)

そう言う、世知愛の声が頭に響く。
世知愛は誰かを『さん』や『ちゃん』、『くん』を付けるのがくせだった。
もう死んでしまった父母さえも、『さん』とつけていた彼女。
もう慣れてしまっていたが、どこか距離を取っているような気がする物言いが、私は大好きだった。決して、決して、嫌ではなかった。

「ねぇ、言った通りでしょ?」

隣で見ていた、世知愛そっくりの巫女が私に微笑みかける。

「もう、漸く終わってくれたね。良かった、これで時音はまた一歩救われるんだ!!」

そう巫女は大きな声で誇らしげに、嬉しそうに言った。
あまりにその可愛らしい笑顔に、私は世知愛を思い出した。

「ねぇ!!世知愛は、私の妹は一体どこにいるの?!答えろよ、信託の巫女」
「どうして知りたいの?君はもう、彼女を助けることを放棄したのに」

巫女は哀れんだ目で私を見る。
私は逃げた。事実から逃げた。けれど、このままたった一人の妹をこのまま失うのも、嫌だ。

「それでも、それでも!私には、妹を心配する権利があるでしょう」
「棄てたくせに。選択肢を選んだ結果なのに、どうして受け入れようといないの?僕は頑張った。いつも頑張った。今、それが報われたの。やっと、やっと僕の愛おしい人の禊を終わらせられるんだ。罰という名の、地獄の川から、やっと」

巫女は恍惚に顔を歪め、駆け寄ってきた狐を撫でる。狐はあまりに嬉しそうで。
私は、その一人と一匹が、酷く羨ましくなった。
前まではあんな風に笑い合っていたのに、世知愛が死んでしまったあの日から私の当たり前は消え去ってしまった。消えて消えて、消えてしまった。
でも、私は権利を手に入れた。
神様に逆らう権利を。世知愛ともう一度人生を歩む権利を、私はもう一度得ることができたというのに、私は棄ててしまった。
この巫女の、藍那の言うとおり、私は努力をしようとしなかった。
努力は無駄だと決めつけた。私は、たった一人の妹を棄てることになってしまったのだ。
どこまでも仲睦まじいこの『二人』に、私は過去を投影させる。
だがしかし、

《敗者は消えてください》

神様はそれを赦さない。
地面から生える真っ青な炎柱。それは躊躇なく、私の体を切り裂いた。

《神様遊戯、お楽しみいただけましたか?それでは、もう二度と会うことはございませんが、どうぞゆったりと輪廻を巡ってくださいね。
プレイヤーの倉木聡美様。貴女は 様である  世知愛を救え せんでした。よっ 、ルールに い貴女を排 します》

もう既に貫かれたこの状態でごちゃごちゃ言われても困るだけ。そのせいで、何を言っているのか聞き取れなかった。
不思議と痛くないのは、せめてもの慈悲か。けれどしっかりと、私の存在が掻き消える音は耳障りなほどに聞こえてくる。
ふと視界の片隅で、見覚えのある青い髪の少女が、私を観て笑った気がした。







みんなの名前はアナグラムでできています。
ちょっと、思いついただけで発展したバッドエンド。
ごめんね、みさっきー。








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