幸せ
夕ノ姫の生まれ変わりという事を知っても、あまり驚きはしなかった。
同じ顔で、夢で会う彼女と話している内に、そんなような気がしていたから。
けれど、ふと蘇る姫の記憶には、どれも知盛さんが一緒で、幸せが溢れていて。
頭に鳴り響く彼女の声を聞く内に、私は一体誰なんだろうかと思った。
私は平野夕。現代で剣道をしている高校生。
なのに、ここに居ると、本当の私は平野夕じゃなくて平夕なんじゃないかって。
周りのみんなの態度と、自分の中の…私が夕ノ姫だったころの記憶が蘇ってきて。
平野夕は最初から存在していなかったんじゃないかって。
でも。
「お前があいつでは無いこと、お前があいつと同じ人間では無いと、」
「俺は、やっと理解した…」
「お前は、お前だ…」
「…私は、私なんだ」
平夕でも、夕ノ姫でもない。
私は、私。
知盛さんに抱き寄せられた時、嬉しさよりも、苦しさが大きかった。
私が姫に似ているから、こんな風に触れてくれるんだって思ったから。
でも、知盛さんが、私は私だと言ってくれた。
他の誰でもない、私をぎゅっとしてくれた。
それがどれだけ嬉しかったか。
真っ白く降り積もる雪の上、私は知盛さんに抱き締められながら。
心からの幸せを感じた。
第一章・輪廻
完
完
20091023