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特別な点を結ばせて 前編


小さな子供の声が響く公園の片隅。
良く晴れた日曜日にひっそりと出される屋外店舗は私の自慢のお店。
許可を頂いて月に二回くらい開いているが、立ち寄って下さる方が意外にも多くて有り難いかぎりだ。

まだ学生で、職人でもない自分がデザイン、制作した小物やアクセサリーを可愛いと言ってもらえる。
欲しいと買って下さる。

そして


「あーー!!今日はいる〜〜〜」


買わなくても毎回足を運んでくれる人がいる。


「三角くんおはよう、今日も元気だね」
「おはよ〜!へへ、今日は葵ちゃんに会えたから元気〜」


そう言いながら私の隣に座り込んで、売る側から品物を眺める彼は斑鳩三角くん。
同じ年とは思えないくらい可愛い喋り方で、とっても純粋な人。
初めて会った時からかなり変わってるなとは思っているが、今ではそれが三角くんらしいと思えるくらいには仲良くなったつもりでいる。


「あーー!!!さんかくいっぱ〜い!!」
「あはは〜三角くんといるとすぐさんかくデザインが思いついちゃうから増えてくの」


彼は自分の名前が三角と書いてミスミと読むからか三角形が大好きで、いつもさんかく探しをしているのだ。
初めて会った時もたまたまあったさんかくイヤリングを見つけて駆け寄ってきたくらいだし、それ以降も私がいると「さんかくある〜?」と陳列棚を嬉しそうに眺めてくれる。
そして三角形の物を見つけると、とても嬉しそうに笑うのだ。

だからかな。その笑顔が見れたら、なんて思ってしまうから。
最近デザインするものにはさんかくが入っていることが多くなった。


「コレとびきりのさんかく〜!」
「え?このブローチ?こういうの好きなんだ」
「うん!!きれ〜〜!」


三角くんに影響されて作るからか、デザイン的には男の人が持っていても違和感ないものにはなっているし、素直にキレイと言ってもらえるのは正直嬉しい。
たまにはあげてもいいかな…なんて甘い考えが浮かんでいたが、三角くんはちゃんと買おうと思ってくれたらしく、ズボンからさんかくに折られたお札を1枚取り出した。


「この間バイトしたからちゃんと買えるよ〜!」
「ふふ、お買い上げありがとうございます」


バイトをしていたという事実に内心驚きながらもお金を受け取り、お釣りを渡す。
無造作にポケットに入れられた小銭は、いつもの様に飛び跳ねて帰ったら落ちるんじゃないかと心配になるけど。
キラキラと太陽にブローチをかざして嬉しそうにはしゃいでいる三角くんにそんなことは言えず、微笑ましく見守ってしまった。


「そ〜だ!これをカントクさんにあげよ〜」
「カントクさんって例の劇団のカントクさん?」
「そー!カントクさん今日しょぼ〜んってしてたから、このキレーなとびきりさんかくで元気出してもらう〜」


葵ちゃんのパワーもい〜っぱいつまってるから百人力〜っと笑う三角くんは本当にカントクさんが好きなんだなって伝わってくる。
前にも劇団の仲間の誕生日プレゼント〜って言いながらどこで見つけてきたのかさんかくのヨーヨーを持って歩いていたし。
三角くんにとって大事な仲間なんだと嬉しそうに話していた時の顔は忘れられないくらい、いい顔だった。


三角くんにとってさんかくとお芝居、そして仲間は何よりも大事な宝物。
裏表がなく純粋で、好きなものを前にした時の顔はとても分かりやすくて。

じゃあ、いつも笑顔を向けてくれる私は三角くんにとっての何なんだろうと、たまに考えてしまう時がある。

でもそう思うのは、ちょっと風変わりな彼に惹かれているから。
彼の宝物に私も入れたらいいのにと欲張ってしまう。


そんな事を考えているからか、自然と普段から身に着ける物にさんかくを選んでしまう私がいた。
さんかくを見に付けていたら三角くんが見つけてくれるかも、なんて期待しているのかな。


「わわ、高宮っちチョーさんかく決まってんね!すみ―が好きそー!」


が、実際にさんかくに反応したのは大学で久しぶりにあった三好くんだった。
日本画専攻の彼とはあまり講義がかぶらないが、三好くんに友達が多いからかお昼に集まった時などに一緒にご飯を食べていたら友達になれてしまった彼。
私が自分でアクセサリーなどを作る事を知っているからか、会うたびに装飾品を褒めてくれるから照れてしまうのだが、今回は最後に言われた名前のほうが気になってしまった。


「・・・さんかく好きなすみ―・・さん?」
「そそ!俺の仲間でチョーさんかくが好きなやつな!名前まで三角なの!すごいっしょ!」


ブロードウェイが近い学校だから劇団に所属している人が多くて今まで気にしたことなかったけど。
そうか、三角くんと同じ劇団の人がいたっておかしくないのか。
そんなことすら全く思わなかったのは三角くんが現実離れした不思議な存在だからだろうか。


「三角だからすみーなんだね」
「イェース☆あっ!今度、俺らのいる夏組の公演があるからおいでよ!チケット用意しちゃうよん♪」


小慣れたようにウィンク付きで誘ってくる三好くんから鮮やかなフライヤーを受け取る。
沢山のさんかくがで構成されたフライヤーには、いつもよりも凛々しい顔をした三角くんが大きく映っていた。


「ちな、すみーが主演だからフライヤーもさんかくデザインね!」


俺が作ったんだけどどう?とデザインへのこだわりを説明してくれる三好くんに、デザイン専攻としてそれとなく意見を述べたけど、意識の大半はフライヤーに映る三角くんへと向いてしまっていた。
なんだか雰囲気の違う三角くんは私が知っている彼と同じ人のはずなのに、どこか違うよな。
それは写真だからなのか、はたまた海賊になり切っているからなのか。

その答えは観に行けばわかるのかなっと、フライヤーと一緒のソワソワするキモチをしまい込んだ。


◇ ◇ ◇


『帆を張れーー!錨を上げろ〜!行くぞ、ヨーソロー――!!!』


公演が始まってからずっと興奮しているのかドキドキが治まらないまま三角くんを見つめる。
雰囲気も声色も全然違う。
三角くんじゃない。あそこにいるのは海賊の船長、スカイだ。

三好くんのポールだって普段の彼とはかけ離れているけど。
それ以上に、三角くんの変貌ぶりに度肝を抜かれた。

なんだか三角くんの中の男をみたきがして・・・・顔が熱くなる。
いつものほんわかしてる三角くんに惹かれていた。恋、していたとおもう。
でも今日、三角くんの新たな一面をみて、不確かだった恋心は確かなものへと変わっていた。


公演後、興奮冷めやらぬままに席を立つと、なんだか廊下に人だかりができていた。
どうやら出演者たちが通路に出てお客様へ挨拶しているようで、私も声を掛けようかと悩んでいると、彼らに一人の女性が近寄って行くのが目に入り足を止めた。


「あー!カントクさーーん!」


近づいた女性に嬉しそうに声を掛ける三角くんの言葉に、止めた足の感覚が消えていく。
他の出演者たちからも「監督」と呼ばれている彼女は、とてもきれいな笑顔で彼らを祝福していた。

みんなの監督さんへ向ける顔が眩しすぎて、彼らに見つからない様に他の人に紛れて急いで外に出る。
チラリと見えた監督さんの上着に、あのさんかくブローチが光っていた。


「・・・・カントクさんって・・・女の人だったんだ」


今までに何度も三角くんから「カントクさん」について話を聞いてきた。
三角くんを救ってくれた、大事な人だと。
大好きな人なんだと。


「ハハッ、ちゃんと好きを自覚したら失恋かぁ…」


なんで今まで女性の可能性を考えなかったのだろうか。
三角くんだからさんかくをプレゼントしただけだと思っていたけど、女性だからブローチだったのかと分かるとより胸が痛んだ。


「あ・・。三好くんにはメール入れないと・・・」


いまいち家までどうやって帰ったか覚えていないが、不確かな足取りで部屋までたどり着きベッドに突っ伏す。
投げ出されたスマホへ何とか手を伸ばし、三好くんへチケットのお礼と舞台の感想を簡単に送った。
舞台で一番印象的だった三角くんの感想は何も言えなかったけど。

目を瞑ればスカイの恰好をした三角くんが「カントクさん!」と満面の笑みで彼女を呼ぶ姿ばかりが浮かんでしまい、慌ててベッドから下りた。
何かしていないとグルグルと嫌な事ばかり考えてしまいそうだから、小物づくりをしようと机に材料を広げる。
無意識で繋ぎ合わせたパーツたちは、気が付けばさんかくだったり海を連想させるような物だったり。
あの舞台の影響力の大きさに一人、乾いた笑いが漏れた。

無意識下で作るモノは自分の心を映す鏡


机の上でさんかくと海賊をモチーフにしたストラップが二つ、寂しそうに輝いていた。

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ひっそりと手を出しましたA3!夢。
大好きな大好きなフレンドへのプレゼントで書かせていただきました!
そしていつものごとく、1話で終われない(笑)

斑鳩三角くん大好きだーー!!!
すみーにとって特別な三つのうちの一つに入りたいな〜って気持ちからこのタイトルに
write by 朋
HappyBirthday Uka!



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