■ 3


「いい顔だな、伊豆原智人(いずはら ともひと)。妹がこれからの生活で味わう苦痛はすべてをお前に返してやる」

 朦朧とする意識が、男の声に反応する。
 智人? それは弟の名前だ。間違えているのか?
 しかし、食事のときは俺の名を呼んでいた。
 どういうことだ。だいたいどうして俺がこんな目にあわなきゃならない。

 涙に濡れた目で合碕を睨みあげれば、合崎は俺の目元を指先で拭って笑った。

「あの子も今は浮ついた恋で何も見えていないが、いずれ解る。お前などは相応しい男じゃないとな。あの子を誰よりも愛しているのは私だ。愚かなお前にも、本当の愛がどういうものか教えてやろう。ありがたく思え」

 なにを言ってるんだ、こいつは。何が本当の愛だ、こんなことするのが愛か? 違うだろうが。愛じゃないだろ、こんなことは!

 しかし、言葉は猿轡でせきとめられて、溢れてくるのは涎と無様な呻き声ばかりだ。どうしてこんなに体が熱い。眠らされた事といい、何かおかしな薬でも入れられたのか?

「さて、とりあえず人間性から教育しなければな。まずはしっかりと、この淫乱な穴を慣れさせてやろう。少々解しただけでやすやすと玩具を咥えて喜んでいるようでは、必要ないかも知れないが、私は優しいからな。傷などつけないようにゆっくりと時間をかけてやるから安心しろ。そして気が狂うほどの快楽を教えてやろう。それを覚えたら次はオアズケだ。我慢と忍耐、節度というものを教えてやる。食事に誘えばなんの疑いもなくついて来て、ガツガツと意地汚く食い散らかすような卑しいお前にぴったりのカリキュラムだろう。それからお前に相応しい言葉遣いと言動を叩き込んでやる。私の妹の傍にいるなら、身の程を弁えていて貰わなければ困るからな。時間はたっぷりある。旅行が終わりあの子が帰る頃には、多少は見れる代物になるだろう」

 そして、俺の見開いた目を覗き込み、笑う。

「ならなければ、ばらばらに切り刻んで犬の餌だ。わかったな?」

 溜まり続ける快楽の奔流が渦をまく脳裏に、合碕の禍々しい笑みが刻み込まれる。狂ってる。コイツは狂ってるんだ!

 恐怖と快感が同時に俺の理性を食い荒らす。

 誰か助けてくれ! 頼む! こいつをどこかへやってくれ! 俺を解放してくれ!

「んうう!! んー! んー! ふぅっ、んうぅうううう!!」

 絶叫も絶頂も塞き止められたまま、涙だけが溢れた。

「さて、では始めよう」

 そして微笑を浮かべた合碕の手が、バイブに伸びる。
 これから襲い来る快感の恐ろしさに、目の前が暗くなる。
 こんなわけのわからない男の手で、いいようにされるなんて冗談じゃない。嫌だ、誰か、助け……っ、!!






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