■ 2


 この男は結婚式のスピーチで滑らかな語り口で会場を沸かせていた。
 式の最後の花束贈呈では、花嫁から受け取った花束を微笑んで受け取り、それこそ花嫁の父のように薄っすらと涙すら浮かべて妹を抱きしめて、祝福していた。

 妹をよろしく、と俺にも堅く握手をしてきた。その手の力強さが示す、たった一人の家族への愛情に感動すら覚えた。

 その同じ男が、同じように微笑みながら口走る言葉とは思えない。いまや男の全身から迸るすべてに悪意と憎悪が滲んでいる。俺はいたたまれず、席を立とうとした。トイレに、と断りを入れる前に視界が歪んだ。

 誰かに頭を掴まれて振り回されたような眩暈に襲われ、そこで記憶は途切れている。そして目覚めればこの状況だ。なんなんだ、一体。

 逃れようと腰を揺すれば、硬くなったモノの裏側がドレスに擦れてとろとろとぬめりが滴る。呻いてもがけば、尻に咥えた振動の位置が揺れて、快感がぞわぞわと全身を嬲る。

 体が熱い。服やシーツに肌が触れるだけで快感が皮膚を這い、腰の奥に淀んでいく。

 助けてくれ。
 誰でもいい、この尻入ってるもんを誰かなんとかしてくれ。途切れない刺激に苛まれ、全身に汗が滲み涙が零れた。

 その時、ドアの開く音がした。かすかな足音。そして、視界に男の顔が現れた。合碕だ。

「ふん、やっと起きたか。夢の中でひとりで随分と楽しんでいたようだな、浅ましい」

 バカにした声と口ぶりの合碕を睨む。
 合碕が笑う。柔らかい微笑みに黒い悪意を纏わりつかせながら。

「良すぎて泣いたか。せっかくのメイクが台無しだな」

 合碕の冷たい指が目じりを撫でた。
 火照った肌がその冷ややかさにぞくりと震える。

「ドレスは気に入ったか? 式に着せてやったのと同じものだ。サイズは少々変えたがな」

 合碕が鼻先で笑い、首筋を撫でる。そんな微かな刺激にすら体は敏感に反応して思わず仰け反る。尻がベッドに擦れ、呻いた。

「なんだ、妙な声を出して。汚してないだろうな?」

 合碕がドレスの裾を捲り上げる。
 あらわにされた股間の光景が天蓋の鏡に映り、俺は思わず目を逸らして、猿轡を噛み締める。

 清楚なドレスの下、そこに伸びた両足に生えていたはずのすね毛はきれいに剃り落とされ、薄く透けたストッキングを白い刺繍で出来たガーターベルトが摘み、股間にそそり立つモノの根元の陰毛も消えていた。履かされていた下着は、紐に申し訳程度のレースがつけられた代物で、何一つ隠しちゃくれない。

 そして合碕が捲くったドレスの裏は、糸を引く透明な体液でぐっしょりと濡れていた。

 合碕が眉を潜める。

「淫乱が。せっかく着せてやった服をこんなに汚して。こんなものがそんなに気に入ったか?」

 合碕の手が尻で震える玩具を掴む。
 そして、半ばまでしか入っていなかったそれを、根元までぐちゅりと押し込んだ。

「んっ! むーっ……!! っうぐ……っふ、ううぅぅううっ!!」

 散々嬲られ続けて充血した穴の粘膜を押し潰すように突きこまれ、俺はくぐもった悲鳴をあげた。

 剛直してひくつくモノに向かってすべての快感が熱く滾る血と共に押し寄せ、解放を求めて荒れ狂う。震え続ける玩具が尻の奥を小刻みにかき乱し、更に快楽の暴流を促し続ける。俺は縛られた手足をばたつかせ、快感に震える腰を振り乱して喘いだ。




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